ステンシル版画で年賀状作成 2022年に向けての準備

  今年も残りあと1ヶ月半になりましたね。1年が経つのは早いもので、もう2021年が10ヶ月も過ぎたのかと思うと、今年もラストスパートをかましていきたいと感じる今日この頃です。今回は1年の締めくくりとして毎年制作しているステンシル版画での年賀状作成について紹介します。もし、今回の記事を見て、「ステンシル版画を自分もやってみよう」と思ってもらえる方がいれば嬉しいです。



 11月下旬から12月下旬までの1ヶ月はこの時期は教員としても忙しい時期で、学期末考査や評定入力、通知表の作成など、かなりのハードワークをすることになります。そんな忙しい時期に担当している生徒に年賀状を書こうものなら火に油を注ぐような状況ですね。

 私はこれまで担任になってから継続して自分の担当する生徒に年賀状を送ってきました。そして、美術教員ということで年賀状には版画で着彩をして、1枚1枚手作りのものを作成してきました。美術教員としてのプライドの高さはベジータ王子レベルです。

 ただ、私が作成する版画はステンシル版画で、この版画については以前にも教材(https://art-educator-tatsuwaki-serendipities.blogspot.com/2021/02/blog-post.html)で紹介したり、ステンシル版画に関する記事を最近たくさん書いたりしていますが、とても簡単に遊び感覚でできる版画なので、30〜40枚の版画をする事になりますが、決して「苦労」というものではなく、「色の実験・研究」としての側面がとても強いので、これまで継続してやってこられたのだと感じています。

 ステンシル版画は切り絵の図版を作成し、それを利用して着彩するので、版画としての楽しみだけでなく、切り絵としての楽しみもあります。下書きをして、マーカーで線をはっきりさせてからカッターで切り抜くと、下がきの時は拙いような印象の絵であったとしても、切り抜いて現れる図版はとても力強い線と明快な形になり格好良く見えます。まさに切り絵のマジックです。切り絵を作成している最中は無心で切り抜く事になるので、この作業は瞑想のようなマインドフルネスの側面もありますし、単純作業なので何か動画の音声などを聴きながら作業するのも良いかもしれません。



 切り絵が完了して葉書にセットしたら着彩です。スポンジやスパッタリング(絵具をつけたブラシを網で擦り、スプレーのように絵具を飛ばす)で着彩すると、図版が綺麗に写せます。この着彩では配色や着彩方法、図版の追加・省略など様々な工夫ができるためバリュエーション豊かな作品を制作することができます

 私はずっと同じ作業をするのが苦手で、そういう作業はせいぜい1時間が限界です。それ以上すると強烈なストレスになってしまうので、配色や表現方法はその都度変えながら作品を量産します。なので一つ一つの作品のクオリティは粗いと言えます。しかし、この粗さもステンシル版画の一つの魅力であり、デジタルで印刷する場合との価値ある違いになると思います。少しはみ出たり、色が滲み出たりといったある意味で手ならではの緩さがステンシル版画の温もりにもなるのではないかとポジティブに考えて、これまで年賀状の版画を大量生産してきました。遊びのある着彩だからこそ、苦役とならず、楽しみながら取り組むことができます。また、挑戦的な色使いをした年賀状や、割とオーソドックスな配色にしたものを分けることで、年賀状の受け手に合わせることもできます。やんちゃな生徒には奇抜な年賀状をプレゼントしてきました(笑)

 年賀状はSNSの普及によって、最近は書く人が減っています。しかし、だからこそ本当に大切な人にはとっておきの年賀状を送るというのも良いのではないかと思います。年賀状がただの「挨拶」としてのツールというよりも、受け手が新年早々に感動できるような芸術品であれば、きっとこれからも年賀状は独自の存在感を放ち続けると思います。そして、美術教員として、そういう「人を感動させる品」の価値を美術を通して子どもたちや、人々に伝えていくことが大切であると考えています。

 「人を感動させる品」であるためには決して技巧を凝らしたような難易度の求められる作品である必要はありません。シンプルな構図や形であっても、配色や構成の工夫、そして何より作者の心がこもったものにさえなれば、この世の中で唯一の素敵な作品になります。私が授業で使う資料で下のようなネズミをモチーフにした構成美があるのですが、これらを見ても分かるように、美というものはそれほど難しいものではなく、作者が狙いや想いをもって形や色で表現しさえすれば、どんなに簡単な形や配色で作られたものでも立派な作品として成り立ちます。実際に私は授業で何度も生徒の作品に感動をしてきましたし、その都度良い刺激を受けてきました。

 誰にでも気軽で簡単に取り組めるステンシル版画、そしてそれを利用した年賀状デザイン。もし、今回の記事でステンシル版画の年賀状に興味を持つことができたという人がいましたら、是非2022年寅年の年賀状を制作してみてください。このステンシル版画の制作方法についてはYouTubeの方にもアップをしていますので、良かったら制作をする際の参考にしてみてください。https://youtu.be/IM9lXmAhKuk 



 最後まで読んでくださってありがとうございました。最近ステンシル版画に関する記事が多くなっていますが、この技法はシンプルですが実に奥が深く、ハマり込んでしまうものだと感じています。最近は和柄のステンシル版画にも取り組んでいたり、ステンシル版画でできることは他にもたくさんあるので、また今後もステンシル版画に関する記事を書こうと思います。私自身ステンシル版画の研究をこれからも進めていこうと思いますので、今後もよろしくお願いします。

 それではまた!

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