Google Formsを用いたテスト対策問題 〜フィードバックの充実とゲーム的感覚で主体的学習につなげる〜


 今回はGoogle Formsを用いたテスト対策問題について紹介します。

 私自身は美術の教員で、美術科ではテストよりもレポートの方が適していると考え、以前にも美術でレポートを作成することの意義について記事を書いたことがあります。「期末課題にレポート作成

 実際に私が勤務する学校では昨年までは1学期、2学期、3学期全ての学期末に美術のテストを行っていたものを、今年からレポート式を取り入れ、1学期と3学期はレポート、2学期のみ定期テストという形に変更してもらいました。本当は全てレポートにしたかったのですが、いきなり全ては学校として難しいということだったので段階的に変える事になった次第です。

 ただ、テストを作成するからには生徒にしっかり知識を定着させてもらいたいと考えています。美術においても知識は大切であり、学力として身につけるべきものであることはレポート推奨派の私も肯定的に考えています。美術の作品や制作年を丸暗記することはほとんど意味がないことかもしれませんが、ピカソという画家がいて、彼がキュビスムやコラージュによって表現の幅を広げ、絵画の意味をより深いものにしたことなど、「ピカソ」「キュビスム」「コラージュ」にはただ言葉を覚えること以上に様々な表現や哲学的な諸要素が絡むため、これらの言葉をキーワードとして身につけておくことは大変意味のあることです。このような美術を通して考える力をつけることにつながる知識を生徒たちにはテストの機会に定着させたいところです。

 生徒の学力定着については最終的には生徒自身が勉強するかどうかの問題になりますが、学力が定着するかどうかの要素を決める大部分は教育している側にあります。だからこそ、生徒の学びが向上するように、教員は日々研究と修養に努めることが教育基本法に定められていますし、少しでも知識が身についた状態でテストを受けられるようにするのが教員として大切な使命だと思います。


Google Formsだからこそできること

 今回テスト対策問題をGoogle Formsを利用してできるようにしたのは、生徒が知識の定着を図る上で非常に有効なツールであると判断したためです。私はこれまでにも知識整理プリントというものをテスト前には発行して、テスト勉強に役立てられるようにしてきました。しかし、ビジュアル勝負の美術で白黒の画像、言葉がぎっしり詰まったプリントでは生徒の学習意欲を刺激するにはあまりに非力であることをこれまで感じていました。



 しかし、今年GIGAスクール構想が始まり、生徒がGoogle Chromeを使えることになったことで、テスト対策の学習としてGoogle Formsを使うことができるようになりました。Google Formsのテスト機能を使えば、生徒は問題を解いたら自動採点で点数と正解を知ることができます。しかも繰り返し取り組むことができるので、FormsのQRコードを知識整理プリントに添付しておけば、学校だけでなく家に帰ってからスマートフォンやタブレットで取り組むことが可能で、「問題を解く→解答解説を見て学び直す→問題を再度解く」というように知識の定着に効果のある反復学習が容易です。また、Google ClassroomでFormsを配信しておくと、QRコードがなくても取り組むことができます。この手軽に取り組めるテスト対策問題というのが非常に大きな効果につながるものと感じています。しかも、これまではプリントで白黒でしか表せなかった画像も全てカラーでわかりやすいため、知識とイメージが合致しやすく、学習効率を大きく向上させることができます。当然のことですが、やればやった分だけスコアが伸びていくので、ゲームのような感覚でできるというのも魅力と言えます。



 回答の結果を見ると、授業の空き時間や家庭から3度目4度目と、すでに満点になっているにも関わらず取り組んでいる生徒が何人もいて、ちょっとしたゲーム中毒に近い状態にあるのではないかと心配してしまうぐらいです。これには多少の罪悪感を感じていますが、近い将来、勉強がゲームのような感覚でできるようになって、これまでゲーム中毒、スマホ中毒になってしまっていたケースが勉強中毒に置き換わってしまう可能性もあると真剣に考えています。勉強は無限に続く冒険のようなものですし、仮想現実やメタバース(仮想空間)が教育の領域に入ってくるのも時間の問題だと思います。


フィードバックの充実が主体的な学びに火を付ける

 学力定着に役立つ何度でも繰り返し取り組める機能に加えて、Formsにはフィードバックの機能もあり、詳しい解答解説ができます。サイトやYoutubeへのリンクも貼り付けられるので、Googleドキュメントに保存されている授業で扱った資料や外部サイト、興味をそそるような動画をフィードバックに加えて、深く学びたい生徒はそこからどんどん深く学ぶことができるようになりました。

 ググる力があれば関連することをどんどん調べて主体的に深く学ぶことも可能ですが、生徒の限られた知識の場合、実はググること自体が難しいケースも多々みられます。詳しくググるためにはかなり具体的な言葉を使うことが必要で、それができるのはある程度の知識を獲得しているからこそ可能です。


 教師には生徒がググれるようにするための案内をする役割が今後ますます重要になってくると考えられます。Formsのフィードバックを利用して生徒が興味を持つことができそうな情報をコーディネートすることができれば、テスト勉強以上の意味を持った学習になります。勉強は決してテストや受験のためにするものではなく、あくまで自分が知りたいと思ったことを身につけるためにするのであり、結果的にテスト勉強から大脱線して出題範囲外のことにどっぷり浸かり込んでしまったとしても、それはきっと後々のことを考えると大いに価値のある勉強になるのではないかと思います。たかがテスト対策問題のFormsでそんなことに繋げることができるかもしれないと妄想が膨らんでしまいました。


回答傾向から間違いの原因を考えたり、問題調整したり

 Formsは回答の結果が集計されて回答分析ができるため、間違いが多い問題があればその原因を考え、生徒に注意点を強調して伝えることができます。正答率の低い問題には必ずその原因があります。そこを教師が認識して自分の指導を振り返り、調整することができれば、教師と生徒共にWIN−WINです。



 また、紙媒体の対策問題と違い、デジタルのFormsでは随時内容を更新することができます。回答傾向を分析して補充するための問題を追加したり、問題自体に不備があった場合に修正するのが容易です。これまでプリントを再発行する羽目になった経験があるという人は業種を問わずたくさんいるのではないかと思いますが、デジタルであればエラーの箇所を訂正し、更新するだけで完了です。


インポート機能で楽々問題作成

 一から問題を作成するのも良いですが、インポートの機能を使えばさらに楽に問題を作成できます。例えば、小テストなどで用いたFormsのデータをインポートすることによって短時間でかなりのボリュームの問題を作成することができます。インポートにあたっては、どの問題をインポートするか選ぶことが可能です。美術であれば教科担当は学年担当は1人というのが普通ですが、大規模校であれば学年の教科担当が2〜3名いるのが普通です。それぞれが小テストを分担して作成し、テスト対策問題を作成する際に、インポートを活用することで瞬く間に充実した内容の対策問題を作成することも可能です。


Google Formsをテストで活用

 そもそもGoogle Formsはアンケートやテストのために使うものであることから、小テストだけでなく定期テストや単元テストといったものにも今後Google Formsが使われるのが広まっていけば、大幅な労働時間の短縮になって働き方改革につながりますし、生徒からしても充実したフィードバックが受けられるようになることが予想されます。実は私自身、今回の2学期末のテストでは知識問題はFormsで行います(思考・判断・表現や主体的な学習態度に関するものは紙媒体のテスト用紙を使うハイブリッド式)。これまで1学年200人以上、2学年で450人以上という莫大なテスト問題の採点を学期末に行ってきましたが、Formsであれば自動採点なので、回答の傾向から正答を広げたり、部分点の調整をしたりする作業があったとしても、これまでに比べて圧倒的に短時間で採点を済ませることができるようになります。浮いた時間は記述問題に対する個別のフィードバックに時間を当てることができるので、テストでも個別最適化の指導がこれまで以上に余裕を持って行うことができます。

 まだ、定期テストでFormsを活用するという例は私の周りでは見られていない(全国的にはたくさんあるのでしょうが・・・倉敷はかなり遅れ気味と感じています)ので、今後GIGAスクール構想の中でFormsを利用したテストが広がることを期待しています。そうなれば、私も周りの教員から「よくわからんGIGAスクール構想を進める変な奴」というレッテルを貼られなくなって、より働きやすくなります(苦笑)。


GIGAスクール構想元年のラストスパート

 ちなみに私も好き好んで今年度ICT担当になったわけではなく、今年度の最初はChromeさえまともに理解していなかったズブの素人でした。新しいことを学び、実践する人を「変わった人」と捉える風習は以前に勤めていた京都でも、今勤めている倉敷でもありますし、これは教育の世界に限ったことではないと感じています。しかし、今まさに日本がGIGAスクール構想でこれまで長きに渡って行われてきた教育の形が劇的に変化する節目を迎え、昭和96年(令和3年)からいよいよ本格的に令和の新しい時代に突入しようとしている中、今後の変化を見据えて自分にできることを可能な限りやっていくことが大切だと考えています。

 別にICTの操作をミスしたからといって解雇されるわけでもありませんし、教師が果敢に新しいことに挑戦し、生徒と一緒にICTの活用について試行錯誤していれば、生徒も「先生がミスするぐらいだから仕方がない」と言ってくれますし、応援もしてくれます。最初に躓いても、やがて色んな要素がうまく噛み合い、遅れを取り戻すどころか今ではこれまでに達成できなかったことを数多く生徒と授業や学校生活を通じて取り組むことができています。デジタルによる成長スピードは2次関数的(AIやロボットの力添え次第で指数関数的になると言われることも)で、掛け合わす要素が増えることで爆発的にできることが増えていきます

 GIGAスクール構想元年である今年、やりたいことはまだまだたくさんあるので、来年良い形でスタートできるように、これからも試行錯誤をしながらできることを増やし、今年度のラストスパートをかけていきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogle Formsを用いたテスト対策問題についてお話しさせていただきました。少々脱線した部分もありましたが、Formsによる自動採点やフィードバックの充実と言った部分は教師にとっても生徒人とってもWIN−WINになるものです。もし今回の内容で興味をもつことができたという方がいらっしゃいましたら嬉しいです。是非Goolge Formsでテスト対策問題やテストを実施してみてください。

 それではまた!


 

コメント

このブログの人気の投稿

スプレッドシートの年間指導計画に様々な要素をリンクさせ、「共有場」として機能させる

Canvaで道徳をアクティブに 〜Googleと連携して〜

Google Jamboardで道徳をアクティブに vol.1

Google classroomを活用した美術科における振り返り活動 vol.1