Google Formsを用いた定期考査を行って見えてきたこと 〜勉強は知的なゲーム〜
今回は以前に紹介したGoogle Formsを用いた対策問題(Google Formsを用いたテスト対策問題 〜フィードバックの充実とゲーム的感覚で主体的学習につなげる〜)に続く内容で、定期考査でGoogle Formsを活用したことで見えてきたことについて記事を書きます。
12月の美術科の定期考査は知識に関する問題はGoogle Formsを活用し、「思考・判断・表現」と「主体的な学習態度」に関するものはペーパーを用いるハイリッド式で行いました。これによって教師と生徒の両方にとって有益な状況が生まれたと実感していますので、双方にとってのメリットをまとめてみました。
教師側として
1.対策問題を作成しておけばテストの作成時間は少なくて済む
テスト問題は事前に作成したテスト対策問題をアレンジしたものなので、問題の作成時間は非常に少なく済みました。これに関して言うと、対策プリントで問題を作成する場合も同様に言えることです。しかし、Formsは編集者を増やして協働作業で問題を作成したり、発展的な取り組み方として他校の先生と協働して作成したりすることさえ可能なので、取り組み方次第でテスト問題の作成に対する負担をかなり減らすことが可能です。
事前にFormsで作成した小テストを対策問題や定期テストに使いたい場合、問題をインポートすることも可能なので、最初は問題作成の負担がありますが、校内や自治体内である程度問題のストックができれば作業が格段に楽になります。
2.テスト用紙の限られたスペースを気にせずに問題を作成できる
これまでA3の問題用紙両面に文章や図を何とか入るようにレイアウトしていましたが、Formsを使ったことによって限られたスペースを気にせずに、画像を使ったり、文章を書いたりすることができるようになりました。
ただ、問題を沢山用意した場合、生徒は残り問題数がどれほどあるか見通しがつかない状態で延々と問題に取り組まなければならなくなります。これは心理的負担が非常に大きいですし、最悪の場合時間内に問題を解ききれず、送信する際に混乱が生まれる可能性があります。そうならないよう、進行状況バーを「設定」の「プレゼンテーション」から表示できる設定にすることが望ましいです。生徒が全体の中でどこの問題に取り組んでいるか分かる状況ならば、生徒は見通しを持ちながら問題に取り組むことができます。
3.問題を印刷する手間が省ける
テストで配布するものは「思考・判断・表現」「主体的な学習態度」に関する作文や絵を描く回答用紙(問題も記載)のみなので、印刷する手間が省けます。しかもフルカラーの画面で問題に取り組むことができるので、視覚的なサポートが容易です。回答用紙にはChromebookで知識問題に取り組むためのQRコードをつけておけば、テスト用紙は1枚で済みます。
4.採点の時間削減
これは言わずとも分かることですが、自動採点によって知識問題の採点にかかっていた時間が7クラスで3時間程度かかっていたものが20分程度(部分点の調整など)にまで削減できました。問題ごとに一括して採点の調整ができるため、採点基準にブレが生じにくいのも良い点です。
生徒側として
1.取り組みやすい
選択式の問題であれば画面をタッチするだけで進められますし、問題と回答が一体になっているため記入ミスによるケアレスミスが減りました。タッチミスという新たな問題も一部で生まれましたが、問題用紙と回答用紙を交互に見て回答していく大変さを考えると、問題と回答が一体化している方が、生徒からすると取り組みやすいのは明らかです。
2.対策問題に何度でも取り組める
テストに向けた対策問題にQRコードで取り組めるようにしておくと繰り返し取り組むことができます。テスト勉強はワークやプリントを用いて取り組むケースがほとんどだと思われますが、それに比べてタブレットやスマートフォンで手軽にできるGoogle Formsの対策問題は勉強のストレスが軽く、対策問題に設けていた感想欄には「画像が見やすく解説もついているので取り組みやすい」という言葉もあるなど、勉強の合間の気分転換ぐらいの感じで取り組むことができていたようです。
しかし、気分転換と言っても問題を解けばすぐにスコアが表示され、解答解説も詳しく確認できるので、間違えた問題を確認して知識を学び、再度取り組めば反復学習によるスコアアップが容易に実現します。このような反復学習は、覚えるべき言葉をひたすら紙に書き写して覚えるようなよく見られる学習方法と比べると圧倒的に負担が少なく、分かりやすい画像や資料が付いた詳しい解説で着実に学力が身についていきます。
3.勉強の心理的負担が減る
多くの生徒にとって勉強が楽しいもので時間を忘れるぐらい夢中になれるものであれば良いですが、残念ながら、現状は多くの生徒にとって(大人も例外ではありませんが)勉強が心理的負担の大きなものであることは否めません。
しかし、対策問題に取り組んでいて「楽しい」と感想で答える生徒が少なくありませんでした。正直に言って対策問題を作成した時はテスト勉強をする上で生徒にとって「便利」と感じるぐらいで十分だと考えていましたが、勉強に対して楽しさを感じている生徒がいたことには嬉しい驚きでした。
繰り返し取り組む中で知識が定着し、スコアが上がるのは予想できたことでしたが、生徒の取り組みの状況を分析すると、非常に「奇妙な」状況を見ることができました。それは普段のテストでは3〜6割程度の点を取る「普通の学力」の生徒が2〜3回取り組んでスコアを上げ、9割程度まで取れるようになっているにもかかわらず、満点が取れるまで何度も取り組んでいることを見て取ることができました。そして満点を取ってもなお、毎日取り組み続けて満点をキープし続けるという学習状況を見ることが少なくありませんでした。
今回、同じ学年を担当する社会と数学の先生も、私が美術の対策問題を生徒に取り組ませていて明らかになってきた状況を見てテスト前に急遽対策問題をFormsで作成しました。そして結果を分析すると美術とほぼ同様のグラフを描いていて、高得点が続出するという状況になっていたことを考えると、Formsによる「手軽な勉強」がいかに生徒にとって有効な手段であるか理解することができました。
ゲームで遊ぶように勉強を遊ぶ
ほぼ満点が取れているにも関わらず繰り返し取り組む状況を見て、これはゲームをしている状況と非常に似ていると私は感じました。勉強していて「楽しい」と感じることができるというのは主体的な学習態度を育てる上で重要です。勉強する楽しさは知識が身についたことで世界が広がるという部分こそ大切にされるべきですが、それに加えて「学習したことが理解できている」という自己有能感がプラスされると極めて効果的です。これはまさにゲームで遊んでいる時と同じように、知識や技術の向上でより良い結果が得られるようになり、「やりたいからやる」という自己目的的な活動でドーパミンがドバドバ分泌されている快楽の状態と言えます。
勉強の素晴らしさは、学習者が主体的にさえなれば、冒険のように果てしなく新しいことを学んでいくところにあると考えています。学んだ分だけ自分の世界が広がっていき、やれることも増えていきます。人生そのものをゲームのように遊びにする力が身についていくことも決して夢のような話ではないと思います。教師は生徒に勉強という遊びを提供して、「楽しい」と思える学習環境を作れるように生徒をサポートする。そんな役割がこれから大きくなることを期待したいです。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogle Formsを用いた定期テストを行って見えてきたことについてお話しさせていただきました。ただ自動採点で教師の業務が楽になるだけはなく、テストに向けて作成した問題を対策問題に生かすことで生徒の主体的な学習態度にスイッチを入れ、ゲームのような感覚でできる状態にさえつながります。今回の内容でGoogle Formsを使った定期考査や小テストの活用に興味を持たれた方がいらっしゃれば嬉しいです。
ちなみに最近の私の関心は 文科省が普及を進めているCBT(Computer Based Testing)であるオンライン学習システムMEXCBT(メクビット)にあります。既にこのシステムを活用している学校も出てきていますが、来年度からこのシステムを使う学校は一気に増える見込みとなっています。これが有効に活用されることで子どもたちにはかなりの学力保障をすることが可能と思われるので、これがどのように活用されるべきか考えていきたいと思いますし、このシステムが定着した学校教育では新しく何ができるようになるか、または教師の仕事はどうなるかについて考えていきたいと考えています。またこれに関しても記事を書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
それではまた!
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