簡単にできるデコレーション

  新年度が始まり、1学期の開始に向けて準備が忙しくなる時期ですね。やるべきことは山積みですが、優先順位をつけて効率よく仕事をし、自分自身の研鑽時間は確実にキープしたいと思います。これまではかなりがむしゃらに取り組んできた感が強かったので、無理はせずに気楽にやっていきたいですね。通常業務も含め、楽しめることが第一優先。今年度も新しいことにたくさん挑戦し、発見したことや、考えが深まったことはブログで言語化していきたいと思います。

 今回は送別会や歓迎会、または入学式のシーズンであるこの時期に手軽にできるデコレーションについて紹介します。最近はGIGAスクール担当などで、美術に関する活動の時間がこれまでに比べると減っていますが、なんだかんだ、こういうイベントは美術教員として非常に燃えます。今回、学校の中で行った教職員の送別会と歓迎会のデコレーションを幹事学年ということで担当しました。年度末の業務で時間に余裕がない中でしたが、効率良く作業すれば、それなりのデコレーションが手軽にできます。


少しの工夫で見栄えを演出



 このようなデコレーションをすると、他の先生たちから「これ全部先生がやったんですか?大変だったでしょう」「いつの間にこんなことやったんですか!?」といったことを言われますが、このデコレーション作成にかかった時間はそれほど大したものではありません。全てを合わせると3時間程度かかっていますが、樹脂粘土で作成した校訓の石碑に2時間程度かかったのを除けば、1時間足らずでメッセージや桜の木や花、校章を作成することができました。

 メッセージは過去に展示会用に使った古い段ボールにチューブで直接色を置き、筆や刷毛で色を伸ばし、適当に色を混ぜて周りをカッターで切り抜きました。一つのメッセージにかかった時間は10分程度。よく見るとかなり雑であることが分かります。しかし、大事なのはパッと見た時の印象であり、ある程度離れたところから見て雑さが分からなければ何の問題もありません。段ボールを切り抜いたことによって浮き出る感じもあり、言葉にインパクトを感じたと言ってくださる方もいました。

 桜の花も、量と面積の割にはほとんど時間がかかっていません。もし一枚一枚丁寧に花びらを切っていたら、これだけの量だと1時間以上かかってしまいますが、画用紙を何枚も重ねてまとめて切り抜けば、瞬く間に花びらを大量生産することができます。めしべおしべ柱頭などの部分は省略したシンプルな形にして、花びらを接着すれば簡単に桜の花が完成します。

 もし桜の花が本物の用に細かく小さなものになれば、それはそれでリアリティーがあって美しいかもしれませんが、花が異様に大きくても、これはこれで装飾的になるので問題はないと思います。リアルな桜を味わいたいのであれば、外に本物の桜を見にいけば良いだけのことです。デコレーションにはデコレーションの良さがあるので、写実や「上手さ」に囚われる必要はないと思います。以前にもマチスのカット・アウトに関する記事(自動化する遊び 〜カット・アウト〜)を書いたことがありますが、直感をそのまま色と形に表すカット・アウトという技法は空間をデコレーションする方法として非常に有効です。バチカン博物館にはマチスのカット・アウトのスペースがあり、そこでは色と形のシンプルな構成美が見られます。美術を難しく考えずに、直感を信じて色と形で構成してみる。そういう気軽さが表現では大切だと思います。


 マチスの作品を見てもわかるように、色と構成による造形美への影響力は非常に大きなものです。形も要素としては大切ですが、決して写実的である必要はありません。今から150年前に印象派が色や形は見えるままに再現せずとも目の中で美しく色が混ざり、空気を感じられる表現方法を生み出し、100年以上前にマチスやピカソが色や形の概念を解放して、自由に表現することの可能性を世の中に示し、美術の歴史はこれまで劇的に動いてきました。こういったことを美術の授業で学んでいても、それを実際に生かしたり、味わったりしないと、本当の意味で学んだことになりませんし、実践する力にもなりません。今回のデコレーションではメッセージの着彩方法や花の表現をする際のちょっとした工夫として、美術的な知識を活用しました。発想力とはその程度のものであり、決して難しく考えることでもないと思います。


教師の美術への距離感を縮めたい

 私はこのようなデコレーションを、当然のことですが送別や歓迎の対象になる方々のために行いますが、そのついでに他の教職員に美術の魅力に気づいてもらうきっかけづくりとして行うことも大事だと考えています。教員が生徒に発言する内容の中で、個人的にすごく不愉快に感じるものがあります。それは、「先生も美術は苦手で、昔は2やったで」と、美術できない発言を平気でする光景です。その発言をした上で、「でも美術の大切さに最近気がついた」などのフォローを自分で入れるのなら問題ありませんが、そうならずに、「美術は苦手やし、美術のことは分からん」と、まるで自分にとって美術は不要という印象を与えるような発言を被せる人が圧倒的に多く、その光景を見る度にすごく遣る瀬無い気持ちになります。「教師が美術不要の価値観を生徒に涵養させてどうすんねん!!」と憤る気持ちを抑えつつ、そういった発言をする人は良い美術教育に出会えていなかったからこそ、そういう発言を平気でするのだと考え、私自身の美術教育の在り方についても改めて考える機会になっています。他の教職員に美術の魅力や手軽さ、そして楽しさに触れる機会を作ることで、「美術できない」「美術とは一部の人がするもの」という思い込みを払拭するきっかけにつながればと思います。

 美術に苦手意識のある大人は、子どもたちも同様に美術ができないと考えがちです。しかし、この場合の苦手意識というのは大抵の場合は「絵心がない」「上手に描けない」といったものです。そのような考え方なら、確かに多くの子どもたちが「美術苦手」に当てはまり、絵が写真のように上手に描ける一部の写実的な表現に興味のある子どもだけが「美術得意」となっていまします。この大人の意識が変わり、美術とは多様性であり、遊びのように手軽に生み出すのも大切な一つの側面であることを認識できるようになると、子どもたちへの美術に関する関わり方も変わる可能性がありますし、大人になってからでも美術を身近なものに感じて学んでいくことにもつながるのではないかと考えています。

 学校全体での教職員も含めた美術への関心を高めることは、美術教員として学校で活動しやすくなることにもつながります。送別会や歓迎会、または入学式や卒業式(こういった生徒の関わるイベントは生徒の主体性に任せたいですね)といったイベントで美術の力が発揮され、その魅力を感じることができる人を増やしていけると学校全体がクリエイティブな雰囲気に少しずつ変化していくことが期待できます。美術教員として、そういった面でも、普段から美術教育のきっかけになるものに敏感でありたいと思います。

 

 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は簡単にできるデコレーションについて紹介させていただきました。今回作成に用いたのはいずれも余っている段ボールやくすんだ古い画用紙、授業で余った色のついた樹脂粘土、そして黒板に貼り付けるためのマグネット(中古のマグネットシート)と、どれもゴミとして処理される対象のものを使いましたが、それでも十分に見栄えのするものを作ることができました。しかも手軽にできるので、何かのイベントの際には子どもたちに取り組ませるのも良いと思います。今回の内容が読んでくださった方にとって何か参考になるものになれば嬉しいです。

 それではまた!

 

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