Googleスライドを活用した協働的な作品鑑賞
今回はGoogleスライドを活用した作品鑑賞について紹介します。最近は協働学習でGoogleジャムボートよりもGoogleスライドを活用することが多くなっています。生徒のICTリテラシーが向上すれば、スライドの方がジャムボードよりも多様で高度なことができるので、手書きが必要な時や匿名性を確保したい時以外はGoogleスライドが有効だと考えています。
今回紹介するGoogleスライドを活用した作品鑑賞の方法は美術の授業以外にも応用できることだと思います。説明に利用する画像は美術に関するものですが、説明内容自体は汎用性のあるものにしていますので、何か参考になるものがあれば嬉しいです。
Googleスライドで作成した雛形レポートと
共有スライドをGoogleクラスルームで配信
授業の前に準備するのは、
1.レポートの雛形になるスライド
2.レポートを共有するスライド
以上の二つです。
これらをGoogleスライドで用意してGoogleクラスルームで配信します。個人用のレポートは「各生徒にコピーを作成」で配信し、共有するスライドは「生徒がファイルを編集できる」の設定にするか、複数のクラスに同時配信するのであれば、予め作成したクラスごとの共有スライドが保存されているドライブを「生徒がファイルを閲覧できる」の状態で配信すると楽です。この場合、授業で協働学習する際に「共有」のところから生徒との共有設定を「編集者」に変えます。
配信の際にはルーブリックの設定もしておき、生徒が目標を持って取り組める手立てをしておくのも良いと思います。ルーブリックは指導と評価の一体化の面でも重要な役割があるので、Googleクラスルームで課題配信する際は基本的にルーブリック付にしています。
各自でレポート作成
美術の授業では作品鑑賞の時間がありますし、その他の教科でも各自でレポートを作成する時間は最近多くなっていると思います。私はレポート作成の際には何についてまとめるのかをある程度方向付けることが大切だと考えています。生徒が困ってしまうケースとして、鑑賞したり、学習したりした後に、「自由にまとめなさい」という指示だけ出して、レポートを作成させるというのがあります。私自身、大学生になって、それまでの問題を解く課題から、いきなりレポートでの課題提出が主となって、どういったものがレポートかもまともに分からずに取り組んだ経験があります。おそらく、レポートとはどのようなものかはっきりとは分からない生徒は多いゆえに、ただの感想文になってしまうことも珍しくないのだと思います。なので、ある程度の道標になる発問をレポートの雛形に設定しておく、もしくは指示や説明をしておくことが必要です。
今回の例は美術の作品鑑賞シートなので、レポートとは若干異なりますが、学習活動を通して大切だと考えたことを入力させるスペースを用意しているので、内容的にはレポートとあまり変わらないものになっています。
基本的にレポートは個人の作業ですが、この作業をする場所は生徒が自由に決められるようにしています。私の美術室は協働作業がしやすいように普通の机の上にコンパネをセットしてスペースを大きくしているので、場所移動して他の生徒と一緒に話をしながらレポートを作成できるようにしています。Chromebookの扱いに関しては生徒間でかなりの技術面での差があるため、生徒同士で教え合えるようにしなければ、一人で30人程度を指導することは困難です。協働作業がしやすい環境というのは学び合いを実現する上でも非常に重要であると考えています。
デジタルでレポートをする際のメリットとして、容量を各自の裁量に委ねられるという部分も大切です。最低限の容量をクリアした生徒には更なるレベルにチャレンジできる仕掛けをしておきたいところです。
ページをコピーして共有スライドにペースト
各自のレポートが完了したら、それをコピーして共有スライドに貼り付けます。生徒はコピー&ペーストという作業を普段やっていないので、この点については少し手間取ることもありますが、これもICTに慣れている生徒の力を借りながら、必要な操作方法はスライドや口頭で説明します。今後のためにもショートカット(Ctrl + C, Ctrl + V)は指導しておきたいところです。あと、事故した時のために(Ctrl + Z)も…。
レポートを貼り付ける際には「リンクをしない」を選択させることも重要です。リンクした状態だと、誰かが共有スライドで間違った編集をしてしまうと、元の個人のスライドが破壊されてしまいかねません。
こうして各自のレポートが集まってくると、多様な考え方に触れることができ、そこからさらに学びを深めることも可能になります。私は他者の考えで良いと思ったものはどんどん自分のものに取り入れていくことを生徒に勧めています。こうすると、自分一人では考えることが難しい生徒でも、共感した考えをもとに少しずつですが自分なりに考えることができるようになります。大切なのはスモールステップを踏むことです。もちろん、自力で十分に言語化できる生徒にとっても、他者の考えに触れることで、新しい視点を持つことができるので、レポートの共有は非常に大きな意味を持っていると考えています。
これまではジャムボードで意見を集める方法をメインにしてきましたが、最近は生徒のリテラシーが向上してきているので、より多機能なスライドでの協働学習にスイッチしてきています。ジャムボードの付箋機能は短い言葉を入れるには良いのですが、細かい説明を入れることは得意としていません。意見の共有で大切なのは深い考えに触れさせることであり、ジャムボードはブレーンストーミングで発想の起点を作ることはできても、まとめの段階では物足りなさを感じてしまいます。言葉が目に見えてどんどん集まってくるので「やってる感」は出るのですが、深い学びとしては不十分であると感じてきました。
スライドではレポートがそのまま貼り付けられるので、より具体的な考えを共有することが可能となり、ページも見やすくなりました。ジャムボードであれば20枚の制限もありますが、スライドにはそのような制限がないという点もメリットと言えます。
教師の役目としてファシリテートは必要
レポートの共有が容易になり、SNSの投稿と同じような感覚で見られるようになると、これまでのように教師が必死になって意見を引き出す必要はなくなります。声が枯れる心配もありません。しかし、生徒の学習をファシリテートする機会を逃さないように、アンテナを張っておくことも必要です。
たくさんの考えの中から、学習の深まりが感じられる考えを抽出して称賛したり、それを起点に生徒に問題提起したりすることで、学習してきたことをより印象深いものにします。このファシリテーターとしての技術がこれからの教師には求められています。そのために、生徒の活動の様子や表現する内容をよく観察し、教師自身が学びというものに対してこれまで以上に幅広く考えられるようにしていかなければいけません。
鑑賞をしていて気付かされるのが、たくさんの意見が集まってくると、必ずその中に目の覚めるような強烈な考え方と出会えるということです。授業が一方的に教師から生徒へ教えるスタイルだとそういう状況にもなりにくいですが、思考や判断、発想といったものは答えのない無限の世界です。生徒の主体性を生かした授業を考え、生徒と一緒に学びながらも、ここぞという時には要点を取り上げ学習と印象を強化。教師に求められる力は人間だからこそ可能な柔軟な感性と高度な対話能力を必要とするプロフェッショナルなものになることでしょう。このような力は決してデジタル・AIの時代になって合理化が進んだとしても、そう簡単に置き換わるものではないと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogleスライドを活用した協働的な作品鑑賞について説明させていただきました。スライドはレポートの共有が簡単に行えますが、他にも色々とやれることはあると思います。貼り付けたレポートに他の人が意見を入れたり、関連性のある情報をリンクさせたり、スライドならではの特性を生かした方法があると思いますので、引き続き改良を継続していきたいと思います。それと同時に、学びのファシリテーターのあるべき姿についても勉強していきたいと思います。不思議なことにICT教育について勉強し始めてから、これまで以上に教育心理学に関することを勉強しています。GIGAスクール構想はただの教育ICT化ではなく、明治時代以来の教育の大改革と言われる新学習指導要領との両輪的存在であることが実感される今日この頃です。
これからもGIGAスクール構想や、遊びのある主体的な学習に関連して研究と実践をしていきますので、手応えのある発見があればブログで発信していきたいと思います。
それではまた!
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