美術科の定期考査での工夫

  11月も後半に入り、2023年の残りも少なくなってきました。この時期は2学期の期末考査の時期で、私が担当する美術科でも試験が行われます。個人的には定期考査は3学期全て廃止にして全てレポートにしたいと考えていますが、なかなか一人の考えだけでは実現できないというのが現実です。しかし、以前は毎学期期末考査があった美術ですが現在は2学期の期末考査のみとなっているので、状況としては脱定期考査に向けて前進していると言えます。

 定期考査が廃止できないことは残念であるものの、それを憂いてばかりいる訳にもいきません。どうせテストをやるのであれば、少しでも有意義なものにして学びに繋げたいと思い、私はこれまでテストの内容とテストに向けた取り組みの方法を工夫してきたので、今回はそれに関する一部を簡単に紹介します。美術に限らず、どの教科にも共通する内容として書きましたので、何か参考になるものがあれば嬉しいです。



Googleフォームで反復学習と充実したフィードバック

 GIGAスクール構想が本格化して今年で3年目。1年目から一貫してテスト対策問題としてGoogleフォームの問題を作成しています。これに加えて、テスト勉強用の資料として1・2学期の学習内容をまとめた対策プリントとGoogleスライドの資料も用意しています。

 GIGAスクール構想が始まる以前は対策プリントだけでしたが、今はChromebookが使えますし、多くの生徒が家庭用端末でインターネットにアクセスできる環境を持っているので、デジタルの資料と対策問題を利用できるようにしてから明らかに生徒の学習が促進された印象があります。


 Googleフォームを活用したテスト対策問題に関しては以前にも紹介しましたが、これを活用することでカラーの画像を見ながら学習者は問題に取り組むことができますし、即採点されて解答のフィードバックも得られ、繰り返し問題に取り組んで知識の定着を図ることができます。テキストだけで知識を覚えるよりも、資料集のように画像とリンクした内容に取り組む方がイメージと結びついて知識として定着しやすいメリットがあります。そして、フィードバックに関連事項のリンクや動画をつけておけば、深く学習することができるため、テストのための勉強というのを超えて、知識欲を満たすための主体的な学習につながります



 このテスト対策問題には学習者の感想を入れる欄もあり、要望があればそれに応えて問題をより充実させることもあります。嬉しいことに、感想の中にはGoogleフォームのテスト対策問題が楽しくて病みつきになるというものが多く見受けられます。美術に限らず画像を使うだけでもイメージは湧くようになりますし、そもそも学習内容の多くが実は画像や動画が伴うだけで好奇心が強く刺激されるものが多いと感じています。私自身、中学生や高校生の時に授業内容そっちのけで社会や理科の資料集に夢中になってしまうこともありました。そんな学習効果が期待できる画像を使いたいだけ使えるGoogleフォームの対策問題なので、時間に余裕があれば是非活用する価値がありますし、一人で問題作成するのが大変だというのであれば他の先生と協働で作成することもGoogleであれば可能です。

 テスト対策の勉強が楽しくて病みつきになる。私の考えとしては、本来はテストのために勉強をするものではないと思いますが、勉強が好きなるきっかけ作りとしてはある程度の効果が期待できるのではないかと思います。


ただの実技テストではなく遊びを入れる

 1年生では色の基本的な知識について学習するので、テストでは実技問題として三原色(赤(赤紫)・黄・青(緑みの青))の色鉛筆を使って色相環を完成させる問題を設定することが多いです。三原色を活用して混色を作り、色相環が完成すれば正解という混色の知識を持っている人であればサービス問題です。しかし、この問題をこれで終わらせてしまうのはあまりにも勿体無いと思います。三原色で無限に混色を作ることができるという面白さを経験してこそ本当の生きた学びになります。なので、そういう経験をテストでできるように、遊びの要素を問題に仕掛けておくようにしています。


 三原色で色相環を作成する問題で必要なことは言うまでもなくオレンジや緑、紫といった色を三原色で調整して作る力です。それさえ解答から見取ることができれば、他のことをプラスαでやったとしても問題ないと考えています。せっかく三原色で様々な色を作ることができて、テストの時間も余っているのであれば、三原色で遊びながら暇を潰すのも良いのではないでしょうか。なので、テストやテスト対策の資料に、三原色で自由に描いても良いことを明記して、テスト中でも安心して色で遊べるようにしておきます



 Googleフォームのテスト対策問題には三原色で描く絵の参考動画をリンクでつけておき、どのようにして三原色を活用しているのか分かるようにして三原色で描いてみたくなる仕掛けも設けています。




 3年生のテストにも自由画(テーマ設定と作品説明あり)を問題として設定するようにしています。自由画と言っても1学期に学習した内容とリンクするものにしたり、3学期に制作する作品のアイディアスケッチの一環になるものにしています。画材も自由なので色鉛筆やマーカー、クレパスなど好きな画材を使います。過去にはポスターカラーのチューブでテストプリントを塗りたくり、手で描く挑戦者もいてとんでもない状態になったこともありましたが、テストを存分に楽しんでもらえました。テスト監督の先生が解答を回収する時に大変だったので、ポスターカラーを塗りたくるような表現は推奨していませんが、どうしてもやりたい気持ちがあるのであれば人に迷惑にならない範囲でやるのは良いと思います。


 このように、テストでは自由に創造力を発揮できる仕掛けが必要であると考えています。なぜなら、テストでは早く解き終わって暇を持て余す生徒や、知識面では限界があって時間があっても問題が解けないという生徒がたくさんいるためです。こういった生徒にとって、発想力を生かし、遊びとして自由に取り組める問題があることは経験値としてプラスにはなってもマイナスにはなりません。学習内容と関連性のあるコンテンツで時間を有効活用する経験は、その後の生活でもしかしたら線として結ばれる瞬間が来る可能性もあるでしょう。主体的な学習者として成長できる機会をつくり出す、コーディネーターとファシリテーターの視点が教師には必要なのではないでしょうか。

テストを1回の授業と考える

 テストをただの点数を測るための時間として教師が問題を用意する場合と、テストを通じて充実した学びを実現してほしいと考えて用意された問題の場合では、同じ1時間のテストでも全く異なった状況を生み出すと私は考えています。テストに向けて勉強を楽しみ、テストでも時間いっぱい楽しく取り組める。そういった主体的な学習態度を伸ばす機会として多くの教師が考えるようになれば、多くの生徒が持つテストに対するネガティブなイメージも少しずつ変わってくるのではないかと思います。
 学習に対するネガテイブマインドをポジティブマインドに変える仕掛け。これはプロの教育者である教師の重要な役割です。テストを研究授業の1つとして考えるぐらいの意気込みがあれば、より魅力的な内容にもなっていくと思いますし、そういった探究心を私自身大切にし続けたいと思います。
 ただ、最初にも言ったように、美術科ではテストは廃止にしてレポートにした方が、良い学習ができると個人的には思っています。それは私自身、大学や大学院で学んできた経験からレポートにすることで多面的に分析したり、自由に発想力を生かして新しいことを考えたりする際に自然と知識が活用されて、より高い次元(メタレベル)で知識を駆使することができるようになるためです。はっきり言って正解を当てはめるだけの知識問題は退屈です。「751年にアッバース朝とタラス河畔で戦い製紙法がイスラム世界に伝わる」「マケドニアのアレクサンダー大王東方遠征がきっかけでギリシャとオリエントの文化が融合したヘレニズム文化が生まれる」など世界史で学習し、青文字の部分などは一問一答の問題集などで暗記しましたが、これを知っているだけでは大した面白みがありません。大切なことはそういった内容が本質的にどのような意味と可能性を持っているのかを考えることであり、想像することだと思います。唐もマケドニアも強力な国でしたが、同じような滅び方をするだけでなく、戦によって文化の面でその後に大きな影響を及ぼすことになったといったことを広く深く考える良い機会になるはずです。
 学びの可能性は広大な宇宙のようなものです。無限の世界に出ていくきっかけとして教科書や資料集を使った普段の学びがあり、知識を定着させて創造的に考える力をつける機会として本来はレポートやテストがあるはずです。そういう視点を大切にし続けていきたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は私が担当している美術科の定期考査での工夫についてお話しさせていただきました。少しでも何か参考になる部分があれば嬉しいです。
 これから期末考査のテストを作成する時期に入るので、生徒から「今回のテスト楽しかった!」と言ってもらえるように工夫を凝らした作品にしたいと思います。
 それではまた!




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