パレットで造形遊び

 今回は色をテーマにした造形遊びについて紹介します。

 先日、ティッシュペーパーを使い切ったので、空き箱を潰そうとした際に、3歳の娘が以前にティッシュペーパーの空き箱をアレンジして恐竜の住むジャングルを作成したのを思い出したのか、「ジャングルを作る」と言い出しました。なので、以前同様、画用紙に絵具で着彩し、パーツを切り貼りしてジャングル作成に取り掛かったのですが、今回はそこから脱線し、パレットを利用した造形遊びに展開しました。

 この造形遊びを通して、改めて造形教育について考えることがあったので、今回はパレットで造形遊びすることの学びとしての可能性についてまとめてみました。



三原色の混色を体験できる仕掛け

 最初は制作の目的である空き箱のジャングル化に向けて、箱と画用紙に直接絵具を出して筆で色を塗り広げるところから始まりました。多くの子どもは絵具を塗り広げるのが大好きで、私の娘も絵具を使う際にはいつも夢中になって色を伸ばし、混色ができることを楽しみながら着彩を進めます。

 出す絵具の色は最初は赤・黄・青の色料の三原色にして、混色による多様な色の変化を経験できるようにするのがおすすめです。単色で塗りつぶすことが悪いわけではありませんが、色は自分で作ることができるということを遊びを通して認識を深められるよう、私は使う絵具に対する仕掛けの視点を大切にしています。ただ、それ以外の絵具も使いたければ使えるようにして、色に対する創造と選択の機会を設定しています。

 チューブから絵具をコントロールして出せるようになるまでは大人が適量を画面やパレットに出してあげて、子どもには着彩体験に集中的に取り組めるよう大人のサポートも必要です。私は子どもが自分で絵具を出せない時期のうちに充実した混色経験ができるよう、色をコーディネートすることが大切だと考えています。なぜなら、幼児が自分の判断で「三原色で自由に混色を作ろう」と考えるのは可能性として非常に低いためです。三色あれば色んな色を作ることができるという原体験があることで、他の色を使う良さも分かるようになりますし、他の色を使う際にも混色で色を自在に調整するマインドセットによって幅広い色彩表現ができると思います。

 このように、子どもが単独では到達し得なくても、他者の支援や環境によって可能となることがあるということを心理学者のレフ・ヴィゴツキーは「最近接発達領域」という概念で説明しています。スモールステップの観点としても、大人による適切なサポートが大切なので、子どもと一緒に遊びながら対話を通して充実した体験ができるようにしたいところです。


パレットの形が着彩のターゲットになる

 私の娘の造形の話に戻ります。娘がこちらが出した三原色の色を使って一通り箱と画用紙への着彩を終えたところで、今度はパレットに絵具を出して色作りをしました。出した絵具はまたまた三原色です。最初はこちらで黄と青を混ぜて「何色になってる?」と質問すると、「黄色と青色」「緑になった」と色の変化に気がつきました。これと同様の手順で黄と赤、青と赤を混ぜて二色が混ざることで他の色が生まれることを確認しました。

 事前の画用紙塗り潰しで混色は作っていますが、本人はただ色を混ぜて塗る行為に夢中になっているだけなので、対話による言語化で認知に落とし込むことが重要です。

 この色の変化をパレットでやってみせたことで、娘は混色に興味を持ったのか、「自分でやる」と言って筆をとり、次々に混色を作っていきました。

 この状況になって、とても大事な発見がありました。それは画用紙に着彩していた時とは違って、パレットで色を作っては皿の形に沿って色をつけるという、形と色の両方の要素を用いた造形遊びをしているということでした。小皿の円形の部分とその周りの部分を塗り分け、パレットの側面も丁寧に塗り始めました。


 パレットは着彩するために絵具を用意する道具という認識が一般的です。しかし、パレットは見方によれば、立体で皿の形を生かした模様をもった着彩のし甲斐がある対象になり得るということを娘の取り組む姿から考えさせられました。


色で造形遊びするための道具として

 私は以前にパレット絵画という中学1年生に指導している教材についてブログで紹介したことがあります。この教材はケント紙に絵具を出して、色彩を自由に表現するエクササイズを経て、絵を描くというものです。



 今回のパレット造形遊びはこれと通じるものがあり、パレットの上で混色することを楽しみながら、自然とたくさんの色を作ることができます。大人の気持ちとしてはパレットに色を作ったのなら、それを画用紙に塗って欲しいという思いもあるかもしれませんが、造形遊びで大切なことは、作品を表現するために造形行為をするわけではありません。パレットを使った造形遊びは「色で遊ぶために」色を混ぜたり、パレットの形に沿って色を塗るわけであり、この夢中の遊びの中で充実した色彩体験をすることになります。

 結果として残るのは遊び尽くされたパレットであり、当初の目的の空き箱ジャングルは画用紙と箱に着彩した段階でストップし、目的を果たせませんでした。それでもパレットで色彩遊びした経験値は十分にそれを補ってくれるものであり、夢中で造形行為をすること自体が子供にとっては大切なことです。

 幼児がパレットを造形する上で適切に使えるかどうかは問題ではなく、パレットという場で遊べるように大人が見守る。こういう遊びを子どもに委ね、体験をサポートすることが長期的な成長を考えると大切になると考えています。パレットの使用は色彩体験を促進してくれます。是非子どもの造形の際には利用してみてください。


 最後まで読んでいただきありがとうございました。今回はパレットの造形遊びについて考えをまとめさせていただきました。こういった造形体験を子どもには家や学校でたくさんさせて、色を自在にコントロールする楽しさを味わえるようになれば、図画工作や美術の学習でも豊かな色彩表現ができるようになると思います。絵具を使うと部屋や服が汚れるリスクもありますが、充実した体験をするためには多少のリスクは仕方がないと思います。少々手間ではありますが、汚れないようにする工夫(カッパを着たり、着彩用の汚れても良い服を着たり、作業スペースにシートを引いたり)さえすれば不安も軽減し、思いっきり遊ぶこともできます。幼少期の造形体験はその後の創造力の源泉となるので、可能な限り子どもに充実した造形の機会を用意してあげたいものです。

 これからも幼児の造形教育に関することで共有できそうな話題があれば、ブログを書こうと思います。育児に励みながら研究も積み上げていきたいと思います。

 それではまた!

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