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第40回倉敷っ子美術展特別企画のワークショップに向けて

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 来年の1月30日〜2月15日に開催される倉敷っ子美術展。この展覧会は倉敷市の小中学校の図工・美術の作品が倉敷市立美術館に展示されるもので、今年は第40回の節目を迎えます。  10年前の第30回の時にはワークショップを行いましたので、今回も会期中に1日限定ですがワークショップを開催します。現在実施に向けて構想を練っている最中ですが、現段階でも図工や美術の教材として使えそうなものになっているので、取り組み方を紹介します。良かったら参考にしてみてください。 倉敷のゆるキャラ作成  今回のワークショップのテーマは倉敷のゆるキャラを作成し、倉敷の名所をバックに写真撮影するというものです。対象は主に中学生以下の児童生徒ですが、同伴する保護者にも楽しんでもらえたらと考えています。  このテーマは小学校の図工部会の先生に考えていただき、実施方法を中学校の美術部会で考えています。地域のゆるキャラをテーマにするのはオーソドックスですが、地域のことについて考える良い機会になります。 作ることや、それを通して様々な作品が生まれ、鑑賞する機会があることは地域愛を育てるだけでなく、身近な要素を活かす創造力を培うきっかけになることも期待できます 。  作って楽しかったは最低限の目的として、そこに教育的な仕掛けで充実した学習ができるよう、ワークショッププランを考えています。 マインドマップでイメージを膨らませる  ワークショップですぐに造形に入るのも良いですが、考えが十分に広がっていないと倉敷の場合、「ぶどう」「もも」「美観地区」終了となってしまいかねません。果物に目と手足が取り付けられたゆるキャラは可愛いものになるでしょうが、こればかりでは倉敷という街を多面的に捉える鑑賞の機会になりませんし、創造力を高めるきっかけづくりとしては弱いものになりかねません。  とはいうものの、造形好きな子どもたちであれば時間を十分に取れば、制作する中で色んな要素を自然に取り入れていくことができるケースもあると思います。ただ、より多くの人にイメージを広げる力を短時間で培ってもらえるようにして、今後の創造力を伸ばすきっかけにしてもらうためには仕掛けが必要になります。なので、今回のワークショップでは、 最初に倉敷のイメージを膨らませ、ゆるキャラの要素を見つけられるよう、マインドマップを書くことから始めることにしています...

授業掲示板で学習への主体性をファシリテート

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 今回は美術の授業で実践していることを紹介します。今回紹介するものは中1で行うグラフィックデザインの学習で利用している掲示板です。  生徒には学習内容に対して興味を持ってもらえるように、普段から色々と仕掛けを考え実践しています。学習掲示板はずっとやりたいと思いながらなかなかしっくりくるものを形にできていませんでしたが、ようやく手応えのある形を実現することができました。 段ボールパネルを折り曲げて自立する掲示板に  これまでにも過去の作品例(写真やレプリカ)をダンボールパネルに貼り付けたものやラミネート加工したものを見られるようにすることはありましたが、壁に掲示するには有効なスペースがなく、教室後方の作業台に平置きしてきました。しかし、この方法はあまり格好が良くなく、スペースも使います。授業の転換で別の学年の授業にセッティングを変更するのも少々面倒という状態でした。なので、ある程度の掲示スペースがあり、授業転換が楽で、しかも教室のスペースを有効に活用できる方法を探ってきました。  そこで閃いたのが段ボールパネルを半分に折り曲げるという方法です。 半分に折れば自立することができ、しかも空間を上方向に有効活用することができます。そして何より視覚的に大変目立ちます。美術室の入り口からすぐに目に入るところに立たせることができ、自然と生徒の目に入る仕掛けとなりました 。  この大きな段ボールパネルは1月から2月に開催される倉敷っ子美術展で作品展示に使うもので、毎年学校に6枚提供されます。この段ボールパネルをこれまでにも色々と有効活用してきましたが、今回も掲示板として活躍することとなりました。  このパネルの裏面にはまだ何も掲示物を施すことができていませんが、いずれ3年生の内容か1年生の次の学習に関係するものを貼り付ける予定です。この方法なら授業転換の際に掲示板をすぐにチェンジすることができます。 学習内容に対して主体性を発揮して取り組めるように  掲示物には過去の作品や私自身が試作品として作成したものを貼り付け、学習内容を活用することでできることを紹介しています。私の授業では学習方法をPBL型(課題解決型学習)にしており、生徒自身が課題を設定して、制作や研究に取り組み、最終的にレポートを作成するという探求学習の方法をここ何年かは継続して取り組んでいます。この方法は教科の枠にとら...

簡単に作って遊べるおもちゃ② 顔パーツの切り絵

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  今回は簡単に作って遊べるおもちゃシリーズで、切り絵の顔パーツについて紹介します。これは、もうすぐ3歳になる娘が最近とても楽しく遊んでいるおもちゃで、顔のパーツを切り絵で作り、組み合わせるというものです。とても簡単にできる、おすすめの手作りおもちゃです。遊びの発展性や子どもの造形感覚を育てる点でも可能性があると考えていますので是非作って遊んでみてください。 画用紙に着彩してパーツを切り抜く  まずは画用紙に色を塗ることを子どもと一緒に楽しみます。色を塗るという単純な行為でも子どもにとって、絵具を水で溶いて筆で白い画用紙に着彩するのは楽しめるものです。そして大人にとっても筆で広い面積を塗ることは気持ちの良いことだと思います。先日、小学校の図画工作部会の研修会で講師を務めた際に、参加された先生が画用紙に遊び感覚で色を塗ることが改めて気持ちの良いことで普段使っていない脳がすごく刺激されている感じがすると言っておられました。塗り方も色々ありますし、混色したり、水の分量を変えたり、着彩だけでも多様な経験ができます。それゆえに、充実した着彩体験ができる機会は特に子どもにとって大切です。  画用紙を着彩したらハサミで切り抜きます。この際、顔のパーツを単純化した幾何学的な形で切り抜くことが大切です。シンプルな形で顔のパーツを切り抜くことで、構成のアレンジを柔軟にすることができます。 パーツの組み合わせ方をアレンジして遊ぶ  顔のパーツを増やせばアレンジの幅が広がります。アンパンマンに帽子と髪の毛を加えたらほぼジャムおじさんになりました。パーツをこのように増やすことで組み合わせのパターンも広がり、より発展的に遊べるようになります。  ちなみにこれは娘が作ったバイキンマン。微妙に本来とは違う構成ですがこういう多様なパターンを楽しむことができるのもこの切り絵のおもちゃの良いところだと思います。  バイキンマンの歯のパーツを構成するのは3歳児にとってとても難しいことです。いずれ巧緻性が身について大人と同じように配置することができるようになると思いますが、このように別のパーツを借用して比較的簡単な構成からスモールステップで入ることで、楽しみながら手を動かす経験が充実することになり、次第に器用に手を動かして構成を調整できるようになります。   最初は本来の組み合わせや配置ができなくて...

図工部会の夏期研修会

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 週明けからは2学期開始ですね。夏休み最終盤となった今週も月曜日を除いて毎日出張(部活動も有)という休めない日々でした。ただ、今週の出張5つ(火曜日は1日に2つでした)の内、研修会が3つで、そのうち2つは私が講師を務める機会があり、とても充実した1週間だったと思います。  私が講師を務めた研修会は久米郡図工部会の夏期研修会とCEC岡山の Canva の研修会でした。Canva の研修会は私以外に多数の講師が発表しましたが、図工部会の研修会は私が全て担当させていただきました。  今回は図工部会での夏期研修会の内容と、成果についてまとめました。研修を通して、図工と美術の役割の違いについて改めて考えを深めることができ、私自身も大変良い学びの機会となりました。 研修内容  「作品のための造形活動ではなく、学びと遊びのための造形活動」  2時間の研修会の最初の1時間は、主に数分間でできるエクササイズを通して、「できない」から「できる」と思えるようになる体験をしていただきました。  最初のエクササイズは割り箸や積木、紙コップ、トイレットペーパーの芯などを活用する構成遊びで、3分間で参加者の先生には自由に形を構成していただきました。短時間ではありましたが、工夫がどんどん生まれ、参加された先生方はそれぞれ全く異なる魅力的な構成をつくられていました。  この最初のエクササイズでは、材料面での環境さえ充実していれば、創造性を発揮することは難しいことではないということ、造形遊びしているうちに工夫が生まれ、結果的に作品として進化するということについて考えていただきました。  続いてのエクササイズは逆さデッサンで、グリッド線入りの犬の絵を逆さにしたまま描くというものです。これは4分間で描いていただきました。このエクササイズはこれまでにもブログで紹介したことがあるもので、上下逆さにすることで対象に対する先入観が弱くなり、結果的に対象をよく見て描くことができるようになり、グリッド線があることで位置関係をグラフのようにデータ化して捉えることができるため、短時間でもポイントを掴んで正確に描けます。これを通して、捉え方と表し方を知れば短時間でも知識や技能の向上を図ることができ、それはあらゆる学びのポイントになることをお話ししました。  ただ、写実的に描く力だけが絵画ではありませんし、大切にしたいのは何...

簡単に作って遊べるおもちゃ① 恐竜切り紙絵

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  今回は、家庭や学校で簡単に作って遊べる紙のおもちゃ「恐竜切り紙絵」をご紹介します。  画用紙を切って貼るだけのシンプルな工作ですが、短時間でたくさん作ることができ、幼児との遊びにもぴったりです。  きっかけは、恐竜好きな私の娘と遊んでいる中で生まれたもの。もちろん恐竜以外の形でも楽しめますが、今回は「恐竜切り紙絵」を題材にお話しします。 着彩した画用紙を下描きせずに切って貼り付ける  まずは画用紙に着彩します。絵具は水彩、ポスターカラー、アクリル、マーカーなど何でも良いです。画用紙への着彩は娘が絵具を使った造形遊びをしながら画面を塗りつぶしました。絵を描く造形遊びをさせていて発見したことがありました。それは、造形遊びなら、ただ絵具で遊びながら塗ることもあると思いますが、娘はずっと話をしながら絵を描いていたことです。「暗くなって夜になった」「明るくなって朝になった」「この道はティラノサウルスが通る道」など、 叙事を発しながら色と形を重ねて描き、絵の姿が何度も変化していました 。絵で物語を楽しむというのが 造形遊びの可能性の一つであることを3歳前の娘から気がつかされました。  そうして塗りつぶされた画用紙をモチーフの形に切り、パーツを貼り合わせます。娘は3歳前で、まだハサミが使えないので、切り抜きは私がやりましたが、子どもがハサミを使えるようになったら是非どんどんやらせてほしいです。  この技法はマチスの切り紙絵(カット・アウト)を参考にしたもので、彼は画用紙に下描きをせずにイメージした形をハサミでそのまま切り抜いていました。形の失敗を恐れて下描きしたくなるかもしれませんが、直感を信じて切り抜くことが大切です。切った形が納得いかないものであれば、切ったものを調整したり、継ぎ接ぎにしても良いわけなので、失敗は気にせずに切ります。下描きをすれば、モチーフに似た形や幾何学的に整った形にしやすいですが、この方法では切り紙絵ならではのデフォルメとアクセントの効いた思い切った形が犠牲になりかねません。マチスもそれを嫌って「色でイメージをそのまま形にできる」切り紙絵の技法を自身の造形方法のメインに晩年はしていました。   自分が切りたいと思って切った形に基本的に失敗はありません。過度に失敗を恐れて下描きをするよりは、切る楽しさ、直感をそのまま形にする楽しさ を大切にしてほしいと思...

ブログ6年目に突入!

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 ブログ毎週更新を始めて丸5年が経ちました。この5年間で私のものの考え方が大きく変化したり、認識が深まったりしたのは、毎週更新しているブログの執筆を通して得られたメタ認知の影響が大きかったと思います。なので、これから6年目に突入していきますが、変わらず毎週更新は基本的に続けていくつもりです。  過去の節目に書いた記事へのリンクも用意していますので、良かったら見てもらえると嬉しいです。 1年目の記事 (2021年8月13日) 2年目の記事 (2022年8月13日)   3年目の記事 (2023年8月11日) 4年目の記事 (2024年8月11日)  この1年間は「ナッジ(さりげなく行動を促す仕掛け)」について実践と研究を重ねてきました。これによって美術室の環境や教材の仕掛けをさらに改善させることができたと感じています。この研究は手応えがあって、まだまだやれること、やりたいことはあるので、これからも継続していきたいと思います。  ただ、ブログを開始した5年前と違って、今では2歳児(今年の9月で3歳)と2ヶ月の乳児がいて、育児にかなりの時間を割かなければいけない状態だけではなく、学校関係の仕事が雪だるま式に増えています。GIGAスクール推進担当や部活動顧問といった校務分掌は従来からですが、中教研の研究部長、文化連盟の事務局(私は運動部で体育連盟関係の人間なのに…)など、学校内の仕事だけではなく市や県の仕事を担当するだけでなく、研修会の講師を務める機会もしばしばある状態で、やることが次から次に湧いてくる日々を過ごしています。今年からは倉北アート&クラフトプロジェクトというボランティアの活動も通常業務外で始めました。そんな状況なので、毎週ブログを更新することはこれまでよりも難しくなってきています。  だからと言って、ブログの更新頻度を下げるつもりはありません。これまで通り6年目も毎週更新していきたいと思います。ブログ記事を書くためには、日々発見することが必須であり、この生活の前提が私自身にとって研究と成長を継続するバイタリティーとなっています。なので、文章量を抑えて端的に記事を書く方向でこれからも更新していきたいと思います。  今回はこれからのブログのテーマについて考えていることを書いてみました。今後に向けてなるべく端的にまとめました。 「遊び」と「学び」の結節点について  ...

Chat GPTのさらなる劇的進化で充実した学習

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 AI関連の進化のスピードが猛烈に加速している昨今ですね。その進化のスピードに少し恐ろしさも感じますが、私は使えるものは使う派なので、大変有難く使わせていただいています。  ブログを書くのは趣味の一つであり遊びなので、基本的に自分で全て書いていますが、最近はChat GPTやGeminiに書いた文章を批評してもらい、改善できるところがあれば改善することもよくあります。あと、とてもポジティブなフィードバックをくれて励みになるので自己満足のためにもAIに相談するようにしています(笑)  今回紹介するのは最近のChat GPTの進化で可能になった学習に関する利用法です。これによっていよいよ勉強の方法や学校教育の在り方が大きく変化する必要性が一気に高まったと感じています。  使ってみてとても面白く学習ができましたので、まだ使ったことがない方は一度試してみても良いと思います。 学習者の状況を分析して対話を調整  今回導入された勉強ツールは勉強に使いやすいように設定されていて、AIが学習内容に関連した質問をしてくれます。しかも、学習者の状況に合わせて極めて対話的に内容を考えてくれます。  試しに英語と社会の勉強に利用してみました。どちらの場合もとても良い発問をしてくれましたし、回答に対して充実した補足説明をしてくれますので、深く学ぶことができます。  ある程度使用していると制限を迎えてしまいますが、内容を絞って集中的に学習するのであれば1日5分程度使うのも良いと思います。大人にとっては短い時間でしっかり学びたいという人も多いと思うので、むしろ大人の学習向けと言えるかもしれません。 資料をアップロードすれば問題作成できる  アップロードした資料に即して問題作成する機能自体は以前からありましたが、Chat GPTがプロンプトを誘導するように質問するため、以前より詳しく問題設定をすることができるようになりました。  Googleフォームなどに使える問題を作成したり、Chat GPTでそのまま対話しながら問題に取り組んだり、手軽に問題に取り組むことができます。  以前はこういった設定を自分で考えてプロンプト入力する必要がありましたが、今回の改良でより良いプロンプトをChat GPTが引き出してくれるようになりました。 上手な問いによって考えがまとまっていく。そんな気の利いた機能となって...