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余ったプロジェクターを活用して光のアート体験を日常的に

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 倉敷市の中学校に待望の大型ディスプレイが導入され、これまで使用していたプロジェクターが教室で不要になったことで、美術室に回してもらえました。実は美術室にあったディスプレイは私の私物の40型TVで、それがないと提示できる機器がない状態がこれまでずっと続いていたというのも異常な状況ではありますが、とりあえず教室の環境は大型ディスプレイの登場で格段に良くなったと言えます。  ただ、プロジェクターを美術室に回してもらえたと言っても、これまで使用してきた40型TVの方が見やすく、これまで通り授業で使っています。なので、普通に考えたらプロジェクターは教室に不要となるわけですが、折角なのでこれでより充実したアート体験をできるように、工夫した使い方を考えてみました。  スクリーンに投射するのが普通のプロジェクターの使い方ですが、プロジェクターから出される「光」としての特性を生かせば面白い使い方もできるので、今回の内容で何か参考になるものがあれば嬉しいです。 天井にメディアアートの動画を投影  教材を提示する役割はTVで十分ですし、黒板のスペースは教材関係のものを掲示したいので、プロジェクターは天井に向かって投影し、メディアアートの動画を投影するようにしています。チームラボや落合陽一などのメディアアートがYouTubeで手軽に見られるので、それを天井に映しています。ただそれだけですが、その映像を見た生徒は感嘆の声をあげます。  一流のアーティストの作品を実物で見ているわけではなくても、色面構成的に非常に優れたものなので、動画であっても美意識に働きかけるものは十分にあると思います。元々こういったアーティストのメディアアートは抽象的なものが多く、テーマ性のある色と構成で魅力的な雰囲気を演出しています。 形への意識が強すぎて色や構成の面での工夫に意識が回らない生徒は多くいますが、こういう動画によって、色と構成の工夫への視点を考えて制作に取り組みやすくなると期待しています 。  プロジェクション・マッピングなども含めてメディアアートは近年人気が高まっていますが、昔からイルミネーションなど、光を利用したアートは多くの人の心を魅了してきたと思います。しかし、光を生かしたアート体験を美術の時間にできているかというと、あまり多くないような気がします。実際に厳密に調査したわけではありま

教材のテーマを抽象化して多様な制作を可能にする

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 今回は私の美術の教材観について考えをまとめてみました。現行の学習指導要領が施行される数年前から指導要領を読み込む中で、主体的で対話的な深い学びや個別最適化、課題解決型の学習(PBL)ができる教材や学習環境について研究と実践を重ねてきました。  美術教員として正規採用される以前から主体的な学習や、個別最適化への視点は大事にしてきましたが、 作品の完成度を追求する中で、多様性のある制作と主体性を伸ばして広く深く学ぶ機会を少々犠牲にしてしまっていた と反省しています。  そんな下積み時代を経て、この5年ぐらいは、さらに多様で取り組み甲斐のある学習を追求するために、現行の学習指導要領、そして今後の学びの在り方を考えてきました。そのような中で、教材観に大きな変化が生まれ、最近は少しずつ手応えを掴むことができるようになってきました。その大きな鍵となるのが 「仕掛けとしての教科書利用」 と 「教材テーマの抽象化」 です。今回はこの二つの内容から私の教材観について説明をしていきます。 教科書活用のマインドセットとは  美術教師の中の会話でよく挙がるのが、美術の教科書の使いにくさです。なぜ使いにくいかと言うと、美術の授業の多くは制作時間であり、教科書を見ても違う教材の作品が多く、制作手順や方法、付随する知識内容が不十分であるため参考資料として使えないと考えている教師が多いためです。せいぜい技法のページとテスト用に知識問題として色の知識に関する資料をぐらいしか使わず、制作の説明はプリントで済ませ、教科書はほとんど見ることなく3年間。そんなケースも少なくないと思います。実際に、私が美術の教科書をよく使い、ページのほとんどを3年間で活用するという話をすると大変驚かれます。  美術以外の教科は知識を獲得するために教科書が使いやすくデザインされていますが、美術の教科書はそもそもテストのための知識獲得を目指したものではなく、見ることを通して美意識を刺激するための「仕掛け」としての役割があると考えています。教科書会社の方ともお話をする機会がありますが、やはりそういうことを狙いにしているようで、知識や技術は資料集にまとめて、教科書は指導要領に則した指導がされるよう、学びのガイドライン的な役割としてデザインしているとのことです。   教科書を使わなくても授業はできますが、学習意欲に火をつけたり、絵画

ハロウィンでパンのマグネット

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 先日の10月31日はハロウィンということで、毎年恒例の実家のパン屋である達脇ベーカリーの商品を模したマグネットを制作して、「Trick or treat」と言ってきた生徒に配りました。  今年は9つ作成して朝の会が終わって1時間目の授業が始まる前に次々に「Trick or treat」と言って来られて一瞬で9つ全てなくなってしまいました。達脇ベーカリーの宣伝のためにももっと作っておくべきだったと少々後悔していますが、全く認知されていなくて大量に余った年もあったので、パンマグネットがもらえなくて残念がっていた生徒には「また来年!」と言って今後の布石にできたのは良かったと思っています。  このパンマグネットは磁石と(軽量)樹脂粘土とアクリル絵具があれば簡単にできます。樹脂粘土を使った工芸品についてはたくさんの情報がWEB上にあるので、作ることに興味があれば是非挑戦してみてほしいと思います。  昨年もハロウィンでパンマグネットを配る記事を書きましたが、今年は違った視点で文章を書いているので、昨年のものと併せて読んでいただけると嬉しいです。 昨年の記事へのリンク 簡単に作れて楽しめるお菓子の模型  これはお菓子作りが好きな人に共感してもらえるのではないかと思いますが、味の良し悪しは置いておくとして、パンを含めてお菓子は造形的な難しさがそれほど高くなく、しかも大量生産したらかなりそれらしく見えるという手軽さと作る楽しさがあると思います。それは粘土で模型を作る場合も同様で、ちょっと手を加えただけでそれらしい品になります。  樹脂粘土は絵具を混ぜると綺麗に色が染まるので、生地の色を忠実に再現することが可能ですし、軽量樹脂粘土は質感的にもパンや焼き菓子の雰囲気を出しやすく、かなりリアルな仕上がりになります。  手に取って構造を分析してみると、その簡単さに気がつけると思います。実際に手作りでお菓子を作る人であれば何の難しさもなく形を作ることができるでしょう。焼き色を調整してつけたり、カレーパンなどのようにゴツゴツした質感を再現したりするには、少々技術や知識が必要になりますが、それほど難しいものでもありません。   パンやお菓子といった身近なもので簡単に表現できるものを粘土で作成する経験は、粘土造形のスモールステップになります 。幼い子どもが粘土に興味をもち、造形することが好きになる

散歩を充実した学習にするChatGPT

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 秋が深まって心地よい時期ですね。秋雨前線がまだしぶとく停滞していて、スッキリ晴れない日も多いですが、まもなくカラッとした肌寒い晩秋を迎え、野山の木々が美しく色づくのを楽しめる時期になるのをワクワクして待つ今日この頃です。個人的に晩秋が一番好きですね。  最近は外の気候が心地よいのもありますが、2歳の娘が口癖のように「外に行く」と言うので、休みの日は一緒に散歩に出かけることが多いです。私自身、散歩は好きですし、自然と触れることは子どもの成長にとっても大変良い影響があるので、私にとっても娘にとってもWin -Winなのが秋の散歩です。  小さな子どもと一緒に散歩に出かけると、子どもは何でも興味をもって触ろうとするので、一緒に行動しているだけで普段見逃していたことと出会う機会も生まれます。娘は植物を見て「これ何?」「赤いお花」など目にした植物を片っ端から質問してきますが、その都度自分が植物名に対して無知であることを突きつけられます(苦笑)。ただ、私も知らない植物名が分からないままだとスッキリしないので、ChatGPTで調べるようにしています。散歩の時間は植物の勉強時間になっており、それは娘にとっても同じと言えます。だからこそ、教える立場として植物の勉強が必要と感じています。  今回はそんな散歩しながら植物の勉強をする上で最近大変役に立っているChatGPTと、それに合わせて使っているメモアプリの使い方を紹介します。何も考えずに一人でただ散歩するのも気持ち良いですが、知らない名前の植物と出会って、学ぶ楽しさを味わえるのも散歩の魅力です。 ChatGPTに画像を読み込ませる  知らないことはググる。そんな時代が長く続きましたが、最近は生成AIがもの凄い勢いで進化していて、これによってさらに充実した学習が可能になりました。2年前にリリースされたChatGPTも最初はテキストを入力してテキストで返答するだけでしたが、 今は音声入力、画像認識、PDFなどの資料読み込みが可能となり、大変優れたフィードバックをしてくれるようになりました 。以前にも紹介したことがありますが、無料で英会話のトレーニングもできてしまいます。  生成AIの良いところは知らない物と出会った時に、その画像をアップロードすることで説明してくれることです。検索の場合、言葉を知っていないと検索しようがないため、散歩な

一律の提出物(課題)がもつ問題についての考察 〜主体性を発揮できる課題設定とは〜

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 10月のこの時期は中間考査が行われている学校も多いのではないでしょうか。テストがあるとそれに向けた課題に関する話を生徒から聞いたり、取り組む様子を見たりすることも多くなります。そんな姿を見ていて思うのが「生徒のやっつけ仕事感」です。課題に生き生きと取り組む姿を見ることは稀ですし、おそらくそれが当たり前だと認識されているのではないかと思います。しかし、本当は勉強が好きになるように教師が仕掛けを考えたり、課題を設定したり、工夫をすることが大切だと思います。知識を獲得するためだけならいくらでも便利な教材がある現代において、教師の役割は「主体性に学習に取り組める生徒の育成」にあるためです。  今回は、生徒が学習に取り組む様子を普段から見ていて、勉強嫌いに繋がりかねない避けてほしい 課題の取り組ませ方についてお話しさせていただきます。 その方法は「一律同じ課題の提出物」です。この問題点については、小中高と学校で課題に取り組んできた多くの人からすると何となく分かると思います。人それぞれ取り組むべき課題は違うはずですし、個人的にやりたい勉強もあるはずです。しかし、学習への主体性が声高に言われるようになった現代においても、依然として一律の課題がスタンダードであるように感じています。  私は、このような提出課題が一般的である原因は、教師が「個別最適な課題の取り組ませ方」について十分な認識ができていないことにあり、やり方が分からないゆえに従来型の一律課題の提出物という方法から抜け出せないためであると考えています。個々に合った課題に取り組む方が生徒のためになるということは、ほとんどの人が分かっていると思いますが、そのためにどのように課題に取り組めるようにするのかが分からないという状況なのではないでしょうか。  今回は一律の提出物(課題)によってどのような問題が生まれるのか、そして個別最適な課題に取り組んでもらえるように、教師として、または子どもの教育に携わる大人として、どのようなアプローチが必要なのか、考察をしてみました。 一律の課題で意欲が増すのは競争の時  一律の課題が必ずしも悪いわけではなく、誰かと競争する時は一律の課題だからこそ意欲が増すこともあります。試合やゲームで少しでも相手を上回るために知識や技術、発想力を駆使するのは大変興奮することだと思います。それはテストで競い合うの

作品を(なるべく)傷めない展示

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 秋真っ只中で心地よい時期ですね。こんな時期には学校でも文化祭など、文化の秋を象徴するようなイベントが行われ、美術や音楽の素晴らしさを生徒たちと一緒に改めて実感できるのは学校教育に携わる者としても 幸せなことだと思います。  私は美術科の教員として、毎年文化祭や学習発表会(学校によって名称は様々)では美術作品の展示をしてきました。全校の生徒作品が展示された空間は大変華やかになり、こういうイベントを強力に盛り上げたり、お互いの作品の素晴らしさを認め合ったりする機会を生むなど、作品展示は非常に意義深いことであると考えています。  私はこれまで展示する際には、なるべく作品が傷まず、効率良く展示できて、作品が美しく見える方法を考え、試行錯誤を繰り返してきました。効率度外視だった20代から30代前半の若かりし時は何日間も深夜まで展示の下準備をして、展示する際も夜遅くまで学校に残って作業し、次の日の朝にも早く来て展示を仕上げるということをしていました。しかし、そんな働き方は家庭の状況的にできないので、効率重視で展示の準備と作業をするようになりました。  そうは言っても作品を大切に扱うという部分は絶対に外せないポイントになります。今回は効率良く、綺麗に作品を展示し、かつ作品が傷みにくい方法を紹介します。使えそうなものがあれば是非実践してみてください。 マスキングテープで壁面固定用のリード   〜画鋲を作品に突き刺さないように〜  作品展示する際に一番やってはいけないと思うのが、画鋲で作品に穴を開けて固定する方法です。しかし、これは割と一般的な方法だと思います。よく作品展に学校単位で応募して作品が返ってきた時に作品の四隅に残酷な画鋲の穴、酷い時には端が破れて虫が食いちぎったような状態になって学校へ帰還することがあります。これでは作品展という戦場に作品を送り出すような感覚になってしまいます。「無事に戻ってこいよ!」と願うばかり。そんな願いも届かずに展示会場では次から次に画鋲が作品を貫きます。これは割と一般的な展示方法ではありますが、この方法に対して疑問を抱いてほしいと思います。心と魂を込めて作成した作品が当たり前のように傷つけられて戻ってきた時、作者はどのような気持ちになるのでしょうか。  今回、 私がこの記事を書いた一番の目的は、少しでも生徒の作品に画鋲を突き刺す人を減らし、効率的

提出用作品ファイルにステンシルでデザインを施す

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 今回は美術の学習で制作した版画作品をまとめて提出するための作品ファイルにデザインを施すことで生まれる学びと経験の広がりについて考察します。  最近の私の美術の授業では、1つの単元の中で複数の作品に取り組めることを基本としており、提出する作品の規格も基本的には自由にしています。絵画であれば八つ切りサイズの画用紙を一律で用意したとしても、それをカットして複数の作品にしたり、画用紙や様々な材料を貼り付けて倍ぐらいのサイズになった作品やモリモリに盛り上がった絵画か彫刻家区別することも難しいような作品であったり、生徒が多種多様な作品に取り組めるようにしています。  複数の作品に取り組めると言っても、絵画作品や彫刻作品であればたくさん製作しても数点程度で収まるので、作品の管理はそれほど大変というわけではありません。しかし、これが版画作品となると話が違ってきます。 版画は1時間だけでも複数の作品ができてしまうため、単元が終わる頃には膨大な作品数になりかねません 。以前は年賀状をステンシル版画で作成する程度のものだったので、小さな袋さえ用意しておけば着彩できた年賀状の版画を管理することは容易でしたが、現在はステンシルで版画作品を作成すると言ってもサイズは様々、支持体も様々にしているため、完成作品をまとめて提出するためにある程度の大きさを持ったファイルが必要になりました。今回はそんな提出用ファイルにも美術的要素を反映させて、美意識を刺激する機会にすることができる方法を紹介します。 提出用ファイルも美しくアレンジ  作品をまとめて回収するだけであれば、クリアファイルに名前を記入させて提出させれば簡単かもしれませんが、 提出用ファイルにも創造力を発揮するチャンスがあると考えました 。A3サイズの紙を半分に折って、一辺を糊やマスキングテープなどでとめて紙製のファイルを作り、あとは好きにアレンジします。  ステンシル版画では日本の美をテーマとした伝統文様や和柄で平面構成を始めとして、例年通りの年賀状やテキスタイルデザイン、版画を活用した絵画などに取り組むことを通して日本の美の再発見をすることを目指した学習をするため、ファイルの装飾に活用できるアイテムは充実しています。 このファイルを美しくアレンジするだけでなく、制作の実験用として活用するのにも役立ちます 。  ファイル自体は提出作品として

秋は外で読書

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 ようやく秋らしい気候になってきて気持ち良く過ごせるようになってきましたね。個人的に秋から冬にかけての爽やかで肌寒くなっていくこの時期は1年間で一番好きです。運動するにも気持ちが良いので、心身ともに快調になれる幸せな時期でもあります。  そして、秋といえば読書の秋でもありますね。読書は屋内でする人が多いと思いますし、私自身も普段は家で読書をしています。ただ、心地よい秋の時期は外出した時に少しでも時間に余裕があれば公園などでkindleを活用してなるべく読書するようにしています。  今回は、私がよく活用する読書スポットについて紹介します。ポイントは「事のついで」です。 家と外出先の間にある公園など  外で読書するのが気持ち良いと言っても、読書のためだけに公園に出かけて読書をすることはほとんどありませんが、ほぼ毎日車に乗って仕事へ行ったり、休日も部活動で学校や試合会場へ行ったりしているので、天気さえ良ければ家と外出先の間にある公園で読書をすることができます。  倉敷や総社にはありがたいことにたくさんの大きな公園があり、駐車する場所にも困らないので、気軽に寄って良い場所に腰掛けて読書しています。読書以外にも仕事もすることがあり、大変捗ることを実感しています。ノマドワーキングですね。 (ソフト)テニスの部活動のついでに試合会場で  試合で利用するテニスコートは大抵大きな公園の一画にあるので、部活動前や部活動後に読書するにはぴったりの場所です。  試合がある日は大体8時前には部活動として始まるので、それよりも早い時間に読書するとなると7時ぐらいからになりますが、朝早くにコーヒーを飲みながら公園で読書するのはとても気持ちが良く、人も少なく大変静かな中で取り組めるので集中することができ、最高の朝活になります。 ランニングのついでに  私の住む街、総社には五重塔があり、この場所を目的地にしてよくランニングするのですが、この五重塔がある備中国分寺には広場も併設されているので、この場所で読書するのがとても好きです。風光明媚な景色を眺めながらゆっくりと本を読む。そんな贅沢な体験ができるこの場所は本当にありがたいです。  写真は夏のものですが、夏のランニングで汗が爆発している時に木陰で休みながらkindleで読書するのも好きです。蝉の鳴き声で賑やかなのですが、それによって逆に周りの音がかき

美術室に道具と材料の表示を導入

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 学習者の主体性が重んじられるようになり、教師には生徒のやる気に火をつけるファシリテータとしての役割がこれまで以上に強く求められるようになりました。私自身も最近はナッジ(行動をそっと後押しする仕掛け)に注目し、できることから実践しています。  今回はその一環として私が取り組んだ美術室の道具や材料を表示する仕掛けを紹介します。これは私が務める中学校の図書館で行われていることをヒントにしました。普通図書館は棚の端にジャンルが表示されていますが、本校では棚の表示に加えて天井からの吊り下げ式の表示もあり、遠くからでも一目でどこに何があるかが分かるように工夫されています。美術室では、吊り下げ式の表示にはしませんでしたが、遠くからでもすぐに分かる表示は導入することができました。 美術室の使用可能な道具や材料を分かりやすく表示  これまで私は基本的に美術室にあるものは「マナーさえ守れば自由に使える」ようにしていました。とは言っても、実際に使うとなると「先生、ボンドを使って良いですか?」「ここにある木材は使って良いですか?」といった確認をする生徒が多くいました。そして、そのような生徒がスイッチとなって他の生徒も続々と美術室の道具や材料を利用し始めるという状況がよく見受けられました。 自由に使えると言われていても、自分のものではない道具を使ったり、美術室にある材料を利用したりするのは少々勇気のいることなのかもしれません。  しかし、 表示のあるものは基本的に利用できるということが分かれば、利用する際のハードルがなくなり、気軽に手に取ることができるようになります 。大きな表示で、 どこに何があるのか目に入りやすい環境となれば、そこにあるものをちょっと使ってみたくなるのではないかと思います。 表示の枠を3種類に色分け  使えるものが分かっても、完全に自由に使えるのか、それとも使用する際に条件があるのか、こういったところを分かりやすくしておく必要があります。なので、利用後は元通りに戻すものは青枠、無制限で自由に利用できるものは緑枠、利用する際に相談した上で使えるものは赤枠と、表示の枠の色を3色に分けることで、より安心して使えるようにしました。  緑枠で表示されているものは、私に相談なくても自由に使えるわけなので、生徒が制作をしていて何か使えるものがないか探すときに役立ってくれると思います。

教科横断的な美術の学習について②

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   前回の関数のグラフでバランスの良い図を描けるという教科横断的な美術の学習に引き続き、今回も数学と関連した教科横断的な美術の学習について、私が授業で実践している内容から紹介します。  上の図は日本の伝統文様をステンシル版画で作成したもので、正方形ベースの方眼と正三角形ベースの斜方眼を基にして図を描いています。こういった文様も方眼さえあれば簡単にかけるようになりますが、そのためにはほんの少しだけ数学の知識(コンパスを活用した垂線と正三角形のかき方)を活用します。ほんの少しとは言っても、数学の知識を活用しなければこれらの文様をバランス良くかくのは困難を極めます。  日本の伝統文様はネット検索すればいくらでも出てきますし、それを拡大縮小コピーして切り抜けば自分で文様をかく力がなくても割と自由に版画作品を作ることも可能ではあります。しかし、そのような方法では数学的な視点で捉え、構造を分析したり、スケールを自在に調整したり、法則を活かして発展的な文様を作成したりする数学的リテラシーを活用した美術表現をする機会を得ることが難しくなってしまいます。  せっかく数学で定規とコンパスだけで垂線や正三角形をかく方法を学んでいるのであれば、そういった力がデザインを構成する基盤になり得るということを実感し、 いつでも状況に応じて図を活用できるのが望ましいと私は思います 。印刷によるコピーではせいぜいA1サイズのものまでしか作成できませんが、この方法を知っていればもっと巨大なものでも自在にできますし、スケールが大きくなるほど数学の力が発揮されます。建築や都市計画のデザインに数学的リテラシーが必要になりますが、平面デザインでの数学の知識の活用はそのためのスモールステップになり得ると考えています。  というわけで、今回は簡単に方眼と斜方眼のかき方、そしてそれを基盤にした伝統文様の作り方について紹介します。興味があれば伝統文様の切り絵やステンシル版画で遊んでみてください。 垂線を活用して方眼作成  コンパスと定規を活用して垂線を複数本かき、同じ長さで区切ったものを直線で結べば正方形を敷き詰めた方眼を作ることができます。垂線をわざわざコンパスを使ってかかなくとも、紙の形に沿って長さを区切れば方眼はできますが、紙に縛られることなく自由に方眼をかく方法を知っておくこと自体に意味があると思います。