Googleスプレッドシートで時間割を協働作成 〜協働・共有の可能性〜
2021年度もラスト1ヶ月を切りました。あと少しで1年が終わって一息つける、そう考えている人も多いかもしれませんが、実際は春休みが怒涛のごとく過ぎ去り、新年度が慌ただしくスタートしていくものです。
この時期は事務的で面倒な仕事が多いですが、新年度になってみんなで協力して作業していると、新しいメンバーとのコミュニケーションの機会になりますし、それはそれで意味のある時間になるので、それほど私は問題だと思っていません。しかし、新年度早々の時期に私にとって数々の教師の仕事の中で最高ランクのストレス体験となるものがあります。それは「時間割作成」です。
超アナログで非効率的な時間割作成
私が過去に経験した時間割作成では大きなボードに授業とクラスと教員の駒を配置していく超アナログな作業です。しかもこの作業は授業が開始されていくため急ピッチで行う必要があり、連日深夜まで仕事をして体力と神経をすり減らしヘロヘロの状態になって職場を後にするという地獄のような仕事です。異なる学年担当の教師で協力して作成するので、孤独な作業ではありませんし、深夜まで作業する時間割作成チームを気遣って差し入れを頂くこともあり、とてもありがたい部分もあるのですが、トータルで考えると心の底からやりたくない仕事と言えます。ちなみに深夜に差し入れを頂き、休憩でジャンキーなものを食べるとその後に強烈な睡魔がやってきます。そのような非効率的で不健康な状態が連日続くことはどう考えても健全ではありません。
ヘトヘトになりながら何とか作成した時間割はたくさんのミスが発生します。事前に授業時間の大まかな希望も取ってはいますが、他の授業との調整もあるため希望通りにはいきませんし、時間割担当としてはガチガチの希望を出されると時間割を調整しにくくなるため、返って難しい状況になってしまいます。頑張って作成した時間割は結局のところ再発行を繰り返し、決定版を出すまでに数週間かかってしまうこともあります。これでは時間割作成する側にとっても、完成を待つ側にとってもlose-loseの関係です。
数名が駒を使って時間割を作成するというアナログ方式は時間と労力の面で非常に悪いパフォーマンスです。これに対して、学校によっては時間割作成ソフトを導入しているケースがあり、細かい条件設定をすることで自動で時間割を作成することができます。これがあれば1日程度で時間割は作成できるので、大変便利ですが、結局条件設定を個別に入れていかなければいけないことや、作成された時間割を確認する必要があるため、これでもかなりの労力は必要です。そして時間割作成ソフトは使い慣れている人が毎年継続して行うことになり、仕事の引き継ぎも考えるとかなり厄介なものであると言えます。理想は誰もが簡単にできる状態であり、それを目指して可能性を探っていくことが大切です。
誰でも簡単なGoogleスプレッドシートによる時間割シート
このような時間割作成に関する問題をGoogleスプレッドシートによる協働作業で解決が可能になるのではないかと考えました。これをするに当たって関数は何も使わなくてもよく、誰でも簡単に時間割作成シートを作成できます。
この時間割シートでは教科名と教科担当者をクラスごとに入力していくことになりますが、この入力は時間割作成担当ではなく、担当者自身が行います。体育や特別教室など、学年が被らないようにする設定は予めしておく必要がありますが、それ以外のほとんどの教科は場所に影響されないため、教科担当者の授業コマを埋めていくことになります。
これまで時間割作成担当数名だけで授業を埋める作業をしてきましたが、これでは授業者一人一人の細かい設定を確認することが難しく、授業コマが埋まっても間違いが見つかり、調整を繰り返すという状況でした。しかし、Googleスプレッドシートを使えば、授業担当者が自分の希望する時間を選択し、決まった時間数を入力していくことが協働作業で可能になります。たくさんの人が時間割作成に関わることになり、各々で自分の時間数を確認していくわけなので正確性が上がります。そして何より、希望が反映されやすいという部分が大きいと思います。
もちろん、協働作業で時間割を埋めていくと、他の教師と希望が被ることもあるでしょうが、そこはお互いにコミュニケーションを取り合って、譲り合ってもらえば良いと思います。この点で教師間のパワーバランスが影響する可能性はありますが…横暴な振る舞いも全て公開された状態で作業をするわけなので、人目を偲んで時間割担当に圧力をかけて来られるより余程良い状況と考えています(苦笑)。
Googleスプレッドシートでは誰がどのセルにカーソルを合わせているか把握できるので、お互い上手に避けあって授業コマを入れていけばかなりの短時間で時間割は埋まるのではないかと思います。まだこの時間割作成シートを運用していないため、どのような状態になるかは不透明な部分もありますが、先日他の時間割担当の教員(長年時間割担当をされている方)にこの件について提案したら「これは非常にうまくいきそうですね!これでいきましょう!」と言ってもらえました。より正確なシートにするのであれば、教師の名前と数字を紐付けして、関数で時間数を確認できるようにして「エラー」を表示する設定をするのも良いでしょうが、ここまで簡単な設定でも十分に機能するのではないかと考えています。もし、もっと効率の良い方法があるというのであれば、ぜひコメントいただきたいと考えていますのでよろしくお願いします。
「協働」「共有」の可能性 〜遊びのような活動〜
今年GIGAスクール構想元年ということで、Google Workspace for Educationが使用可能となり、様々なGoogleの機能が学校の業務や授業で活用可能となりました。これまでは仕事も勉強も、単独作業が多く、「できる人がする」的な風潮が非常にありましたが、Googleで協働作業が可能となり、多くの人が手軽に作業に関わることができるようになったのはとても大きな変化ですし、これまでの考え方を根本から変えていくきっかけになったと実感しています。
授業や研修ではGoogle Jamboardで考えが簡単に共有できるようになり、個人的な思考ではなく、多様性をベースにした思考活動が容易になりました。会議の資料をGoogleドキュメントにしたことで、参加者が協働で内容を盛り込んでいったり修正したりすることも可能になり、生徒会活動でも活発な議論や取り組みが実現しました(生徒会活動でGIGAスクール構想を推進することの可能性)。私が担当する美術の授業ではブレーンストーミングや制作のアイディア共有で大変な恩恵を得ることもできました(学習を共有してアクティブラーニング)。これら全てが「協働」「共有」によって成り立っています。
個人的な話ですが、私は大学院の時代から一貫して「遊び」を研究のテーマにしてきました。「遊び」という様態には様々な哲学的、心理学的な構造があるため、説明は簡単ではありませんが、「協働」や「共有」は「遊び」という創造性あふれる主体的状態と深く結びついた関係にあります。デジタルによる協働作業は一種の遊びのような側面さえあると、生徒たちの協働的な学習風景を見ていて感じます。
「デジタルは人と人との距離を遠ざける」という考えもありますが、協働作業という面ではこれまで以上に他者との関係が必要となり、共に良いものを作り上げていくという意味で、むしろ人との関係を発展させる側面さえあると私は考えています。だからこそSNSのチャットも過度なまでに盛り上がってしまうという負の側面もあるかもしれませんが、これからデジタルと私たちが上手に付き合っていく方法を考えていけば、多くの人がデジタルの恩恵を得て幸せになるのではないでしょうか。
最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogleスプレッドシートを活用した時間割作成について考えを書かせていただきました。今回の内容が参考になったという人がいらっしゃれば嬉しいです。また、これから時間割作成に向けて今回紹介したものを改善していきたいと考えていますので、アドバイスがあれば是非お願いします。
GIGAスクール構想2年目に向けて協働と共有の可能性についてさらに研究をして、有効な方法や授業の在り方についていきたいと思います。
それではまた!
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