教育美術 第3回「美術室の出入口のデコレーション」

  教育美術第3回目は美術室の装飾についてです。第1回「国旗で彩られた地図、第2回「トイレのパーテーションデザイン」のように、美術の授業時間以外での美的な刺激も大切だと思いますが、やはり私にとって普段から一番関わりのある美術室が教育美術作品を展示する主な場所になります。

 美術室のスペースは可能な限り美的刺激で満たすことが私のモットーで、教室にはたくさんの生徒作品(基本的にはレプリカ)を展示しています。もちろん全ての作品を展示することは不可能なので、展示されていなくて「自分の作品は展示されていないのかぁ…」と残念な顔を見ることもありますが、それを考えてしまうと作品は全く展示できませんし、展示する作品が有名な画家の作品ばかりになってしまうと、生徒からするとかなり距離を感じる作品だらけになってしまいますし、そもそも有名な画家の作品なら教科書や美術資料に美しい画質でたくさん載っているので、それを教室に掲示する必要は基本的にはないと考えています。それに対して、身近な人の作品というのは生徒にとって大変刺激的で、「同じ中学生がここまでできるのなら自分にもできそうだ」となり、美術に取り組む際のモチベーションにつながるものと感じています。

 生徒の作品を展示するなどして美術室の中を徹底的に見応えあるものにすることを常々考えているわけですが、この美術室の出入口はそんな空間を象徴する大切な場であると考えています。出入口は家で言うところの玄関。大抵の建物の玄関はいつもきれいに保たれていると思います。逆に玄関がひどい状態というのは内部も怪しい状態なのではないでしょうか。なので、生徒が気持ち良く入ってこられる状態に出入口のドアを整えることが大切だと考えています。おもてなしの精神ですね。

 私はこれまで勤めてきた学校の出入口に植物の写真を組み合わせてデコレーションし、窓の部分はステンドグラス風にするという方法でアレンジしてきました。質的な部分で考えたらドアに直接ペンキなどで塗った方が良いものになるかもしれませんが、それは学校施設の性質上ハードルが高いので、ラミネートした写真や画用紙を両面テープで貼り付けるという手軽な方法でアレンジしています。


 そもそも、私がこのようなアレンジをしようと考えたきっかけはフィレンツェに行ったときに(旅は人生を変える フィレンツェ)街の象徴であるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の入口があまりにも荘厳で、建物を見事に象徴していると感じたことでした。私はキリスト教ではありませんが、建物の外観と入口の美しさのダブルパンチで内部に入る前から気持ちキリスト教モードに仕上がってしまっていたことを覚えています。美の力が精神に及ぼす効果は多大です。週に1回しか美術の授業はありませんが、授業で出入口を通過する度に、美術の効果を感じられるような仕掛けができればと考えるようになりました。美意識を刷り込みます(笑)

 とは言っても、このアレンジは特別な技術が必要というわけではなく、写真を撮ったり、必要な画像を検索したり、カッターを使う技術やラミネートをする技術さえあれば、誰でもできるものです。赤黄緑青紫の同系色で写真を集め、それらを拡大して印刷し、カッターで同じサイズに切り、ラミネートしたものを両面テープで貼り付けていけば簡単にドアのデコレーションはできます。私はこれまで一貫して植物の拡大画像を利用してきました。普段何気なく見ている植物も、拡大して見ると興味深い模様やパーツが見えるので、新しい視点に気がつける仕掛けという意味でも植物の拡大画像を用いるようにしています。

 ステンドグラス風の窓の部分は、黒画用紙を折り曲げ、ハサミやカッターで適当な形に切ればシンメトリーな模様ができます。後はその画用紙にできた穴をカラーセロファンでカバーしていきます。


 接着剤で穴の周りに少し塗り(割と適当でOK)、セロファンを被せて、余分なところをカッターで優しく切れば、セロファンだけ切れて画用紙は切れず、穴を塞ぐことができます。色が必要なところを埋めれば最後にラミネートをしてパーツは完了。





 最後に窓に取り付けます。ラミネーターは一般的にA3サイズが最大なので、窓のサイズを埋めようと思えば複数の画用紙を組み合わせる必要がありますが、予め窓のサイズを画用紙のサイズに分割してマスキングテープで枠取りをしておけば、ラミネートしたものをその枠に合わせて貼り付けることできれいにはまります。


 ラミネートした画用紙が重なる部分が不恰好になりやすいので、その部分をマスキングテープで重ねればきれいに仕上がります。

 このステンドグラス風の切り絵とタイル状に並べた写真によるデコレーションは少々手間がかかりますが、難易度自体は決して高くありません。シンプルな形の組み合わせと、ある程度テーマ設定した配色さえできれば美しい構成びができるということをこの出入口のデコレーションから感じてもらえたら生徒の美術へのハードルもきっと下がると思われますし、身近なところから表現に用いる素材を集めることへの意識づけにもなると考えています。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は美術室の出入口のデコレーションという教育美術について紹介させてもらいました。美意識というものは教育によって培われるだけでなく、普段の生活の中で自然に身につく側面も大きいと私は考えています。普段から美しい環境に身を置いていれば、美的に問題がある状況と接した時に違和感を感じるでしょうし、逆に普段あまり美意識の感じられない場所に身を置いていれば、美しい場所に足を運んだ時に強い衝撃を受けることでしょう。究極的には、たとえ私自身が授業で大失敗したとしても、美術室に足を運ぶだけで美的に充実した体験ができるような状態を目指していきたいと思います。ディズニーランドは良いお手本ですね。私は長年行っていませんが。

 次回は今年の夏休みに新たに制作した教育美術について紹介します。この作品は末永幸歩著の「13歳からのアート思考」という本に影響を受けて制作しようと考えた作品です。もし興味があれば、また次回のブログを見てもらえたら嬉しいです。

 それではまた!


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