ブログ5年目スタート!

 早いもので、ブログを開始してもう4年が過ぎました。これまで週に一回記事を書くことを継続し、一瞬更新ペースを上げた時期もありましたが、週に一回書くことが完全に定着しているので、これからも無理なく自分のペースでブログを更新していこうと思います。

 今回は過去1年間を振り返りつつ、ブログ5年目で主に取り扱っていきたいと考えている内容についても書かせていただきました。

 過去の節目に書いた記事へのリンクも用意していますので、良かったら見てもらえると嬉しいです。

1年目の記事(2021年8月13日)

2年目の記事(2022年8月13日) 

3年目の記事(2023年8月11日)


4年目の振り返り Well-bingと教育について

 3年目まではSociety5.0感の強い内容で、ICTに絡める内容が多くありました。自分自身、学校では総合やICT担当をしてきたことで、自然と新しい時代の学びや仕事の在り方(PBLやアダプティブラーニングなど)や、DXにつながるような作業や学習方法について考えることが多かったことがその要因にあったと思います。今思うと、この頃は決して詳しいわけではないICTについて必死に勉強して、とりあえず試しにやってみる成長への意識、そして成果を求める側面が非常に強かったと感じています。

 それがブログ4年目になって大きく方向を変化させることになり、それまでのICTに関連することの割合が小さくなり、より良く生きるWell-beingに関する記事の割合が大きくなりました。体育会や部活動、ゴミ拾いボランティアなど非常にアナログな内容を扱うことが多くなったのが4年目の特徴として言えます。だからと言って普段の教育活動でICTを使わなくなったわけではなく、継続して活用していますし、美術教育におけるICTの活用方法を継続的に改善させてきました。進化が著しいAIの活用もかなり積極的に行っています。

 しかし、不思議なもので、ICTを日々使っていると、逆にこれまで見落としてきたアナログの良さも日常的に感じるようになりました。デジタルやAIといったICTに関することはあくまで何かを解決する上での数多あるツールの一部でしかなく、心がいかに動く体験をできるかが生活の中では根本的に大切であり、むしろ体験する際のマインドセットの在り方に着目する必要があると考えるようになりました。これは以前からも思ってはいましたが、最近その思いがさらに強くなったと感じています。そのような中でWell-beingについて記事を書くことが多くなっていったように感じています。

 Well-beingという言葉自体も以前から大切であるとは考えてはいましたが、アーサー・ブルックスなどの著書を読んで認識が深まり、それを基にして様々な事柄と関連させて考察したことで普遍的に重要なことであると考えるようになりました。それによって、現状の学校の成績の在り方に対する課題意識をより明確にすることができたと感じています。


5年目のキーワードは「ナッジ」 環境づくりを第一に

 昔から環境づくりにはある程度のこだわりがあり、特に美術室やその周辺の環境には様々な工夫を施してきました。環境が人を育てる可能性を自分なりに大切にしてきたつもりです。良い環境で適切なファシリテーションがあれば人は自ずと充実感に溢れた幸せな時間を送ることができるようになると私は信じています。現行の学習指導要領では主体的に学習に取り組むことができる人を育てることに非常に重きを置いており、この理念に関して私は大賛成です。テストで良い成績を取るための小手先のテクニックや記憶方法で得る達成感を勉強のモチベーションにしても生涯主体的に学ぶようになるとは考えられません。そもそもテストや競争で優秀な成績を収めることが勉強の目的ではありません。状況を創造的に調整し、生き生きとした人生を送れるようにする素養を身につけることが主体的な学習の目的であり、そういった学習ができるように学校と社会は環境をより良くしていくことが求められていると思います。

 しかし、主体的に学習に取り組めるようにすることが大切と分かっていても、これを全ての生徒に実現することは並大抵のことではありません。これに関しては生徒が興味を持つような仕掛けが大切であることは重々承知していますし、そのために授業の導入を工夫したり、生徒の好奇心を生かせる教材を研究したり、様々なことに取り組んできました。

 幸いなことに、これらから手応えはある程度掴むことができてきたわけですが、何か決定打となるようなポイントが絡められていないようなモヤモヤ感が常にありました。そんなある日、身に覚えのある内容の投稿をXで発見します。それはハエの絵が施された便器についてで、これはアムステルダムのスキポール空港のトイレにあります。スキポール空港はヨーロッパの主要な空港で、よく他の国へ飛行機や鉄道で経由する際に利用してきました。そんな利用者の多い空港なので、おそらくこのハエの存在ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 下の写真は実際に私が撮影したものですが、1枚目の写真を見ると普通にハエが便器に止まっていると直感的に思ってしまうのではないでしょうか。私も咄嗟にハエがいると思ってよく見ると絵だったので、「オランダ人のジョーク?」ぐらいにしか最初は思っていませんでしたが、いざ用足しする際についついこのポイントを狙いたくなってしまいます。あまり上品な話ではありませんが、私の気持ちがわかる人がたくさんいることを願います。



 実はこの仕掛け、便器からそれた小便を処理することにコスト面で空港が困っていた際に思いついた策で、ハエのシールを貼っておくと、利用者がここを的にして狙いを定めるようになり、尿が床に飛び散らなくなった結果、なんと清掃費は8割も削減されたそうです。
 このハエの登場によって、利用者は用足しの際に狙いを定めるモチベーションと充実感(!?)によって結果的にトイレが清潔に保たれるということが実現しました。このような、「人にモチベーションを与えて良い結果に繋げる」「本人が良い選択をできるようにそっと後押しする」仕掛けのことを「ナッジ」と呼びます。このナッジ理論は行動経済学との関連で生まれてきたもので、リチャード・セイラーはナッジ研究で2017年にノーベル経済学賞を受賞しています。ナッジ理論は良い方向だけでなく、悪用されてしまうこともありますが、少なくとも教育の分野では良い方向に活用する価値があると思います。
 「ナッジ」によって主体的な学習者が育つ環境。そんなものを作ってみたいと思うようになりました。これは夢物語のように感じるかもしれませんが、そもそもテーマパークや人気のスポットはそれができるようにナッジを取り入れており、特にセイラーがノーベル賞を受賞して以来、ナッジ理論が注目されて様々な業界で積極的に取り入れられるようになっていることからも、教育の世界でも力を入れて然るべきことであると考えています。
 これまで学校では学習の動機付けとして成績や内申など、生徒にある種の強制的な働きかけをしてきた部分があると思います。私自身はそうならないように努めてきたつもりですが、それでも授業の課題に主体性を発揮して取り組めない生徒がいたのも事実です。しかし、そもそも授業環境がナッジによって自然と主体性を発揮できるような状況にデザインできれば、自然と活気溢れる充実した学びの時間を実現することもできると考えています。
 教育とナッジ。この組み合わせは非常に相性が良く、結果的に生徒のWell-beingにも大きく貢献することになると考えています。ナッジに関する具体的な取り組みを増やしていけば、究極的にはどんなテーマパークにも負けないぐらいに楽しい時間を送れるような場に学校もなれるかもしれませんし、それを目指して日々楽しくアイディアを出していけたらと思います。


気持ち新たに 新居での生活がスタート

 実は5年以上住んでいたアパートを8月で退去することとなり、新築での新しい生活が始まりました。平屋で床面積自体はアパートの時とあまり変わらないぐらいの小さな家ですが、そんな家でもなんとか2畳半の書斎を設けることができました。妻に感謝(笑)

 環境が変わって心機一転!と言うのは大袈裟ですが、これまで以上に良い環境で生活できるようになるのは自分にとってポジティブなことですので、これからも教育活動に趣味に、そしてこのブログにと励んでいきたいと思います。

 

 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はブログ5年目がスタートしたと言うことで、これから力を入れていきたい「ナッジ」について話をさせていただきました。可能な限り、「ナッジ」に関する研究と実践をこのブログでも扱っていきたいと思いますので、これからも見ていただけると嬉しいです。

 それではまた!

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