Googleスライドで生徒と共有する授業資料を授業毎にアップデート


 今回は以前に紹介した「学習を共有しアクティブラーニングを実現するGoogleスライドの活用」(2022年1月)と「Googleスライドを学習ツールのリンクの場に」(2022年4月)の発展編になります。以前の内容はもう1年以上前のものなので、今回記事を書いてみて自分自身の活用方法の発展を改めて感じています。GIGAスクール構想3年目も半ばを迎え、授業で生徒と探究しながら学ぶ場、そして更なる学びの世界へ踏み入れる入口としてGoogleスライドを活用した授業資料を以前よりも有効に機能させることができるようになってきました。今回はそんな手応えを感じているGoogleスライドの活用法について紹介します。


学習に関する情報が集まる場



 以前はGoogleスライドで授業資料や制作状況の情報共有、Googleジャムボードで1時間毎のめあてとまとめ、授業の中で撮影したものなどを載せ、二つのツールを使い分けていました。しかし、これをすると指導する中でタブを切り替えることが多く、生徒も多くのファイルを起動させる必要が出るため、効率的ではありませんでした。

 このような状況を解決するため、最近は1つのGoogleスライドのファイルで全てが成立するようにしています。制作に関するページ、生徒へのフィードバック内容の共有、全クラスの制作状況の共有など、このファイルさえ開いておけば参考にできる情報に手軽にアクセスできるという状態にしています

 私が指導する美術科では制作と鑑賞が主な指導内容ですが、制作に費やす時間が多くなって鑑賞の学習が手薄になるというケースが多くみられます。もしかしたら大人の中には中学校の美術で鑑賞の授業を受けた記憶さえ残っていない人や、厳密には鑑賞の授業とは言い難いような「テスト対策」のようなただ作者と作品名、表現方法を覚えるだけの授業を受けたことがある人もいるのではないでしょうか。実際に、美術の教師同士で話をしていると、鑑賞の授業に対する苦手意識を持っている教師は少なくありません。制作した作品の鑑賞会なら生徒は自然と作品を鑑賞して感想文を書くため、鑑賞の授業が苦手であっても一応授業は成立させられると思いますが、制作と鑑賞が一体化するような鑑賞の指導にはなかなか至らないという悩みはよく聞きます。

 しかし、制作を始めるきっかけとして鑑賞の授業を入れたり、制作を進める中で作品を発展させる有効な手立てとして鑑賞を入れたりなど、鑑賞の学習は常時行われる可能性を持っています。主体的に学習に取り組む生徒にとっては、制作の中で必要があればいつでも鑑賞の学習を自ら行い、その学びを制作に生かします

 そのような学習を促進するためにGoogleスライドの授業資料が役に立ちます。この授業資料では学習に関する情報が授業毎に更新され、他クラスの授業で話題となった内容も共有されているため、そういったことに触れながら生徒は自らの学習を調整していきます。そして、発展的な取り組みがまたこのファイルで共有されて他の生徒の鑑賞学習を促します。

 この学習に関する情報を集める場であるGoogleスライドの授業資料があることで、好循環が生み出され、生徒の学習活動が発展していく状況をつくりだすことにつながっていると感じています。


授業中に出た生徒の疑問から視野を広げる仕掛け

 生徒が探究的に学習に取り組んでいると、自然と素朴な疑問を投げかけてきます。例えば、絵画の制作であれば、「背景は色を塗らなければいけませんか?」という質問をされることがあります。こういう質問に対しては「どちらでも良い」と答えたり、「塗らないのがベストだと思えば塗らないという選択も良し、塗った方が良くなると思うのであれば周りとの関係を考えて色を塗るなどする選択も良し」と答えたりするのが多いと思います。私も基本的にはこのように答えるようにしています。美術教師の中には「色は必ず塗りなさい」と指導する人もいるようですが、作品制作はあくまで制作者の主体性に委ねられるものなので、表現方法について教師が強引に指導するというのは望ましいものではないと考えています。

 ただ、生徒の主体性に委ねて選択を自由にさせるだけでは、指導としては不十分であると考えています。これがまかり通るのであればそもそも教師は不必要ということになりかねません。教師の役割は、生徒の疑問を生かして視野を広げられるような「刺さる仕掛け」をすることにあります。

 刺さる仕掛けをする上で役に立つのが画像を利用したGoogleスライドの資料です。背景を塗るか塗らないかという指導を私は侘び寂びの余白を大切にする日本の美意識と西洋の装飾的な美意識について触れて説明しました。画像があるとその違いがはっきりと理解できますし、侘び寂びの美しさとは何かについて視覚的に理解することができます。侘び寂びについては社会科で学習していますが、残念なことにその本質を理解している生徒はほとんどいません。しかし、美術の授業で実際に表現に生かす視点で侘び寂びの美意識について触れると、その価値について深く理解できるだけでなく、それをきっかけに日本的な余白を大切にした表現が生まれたり、逆に西洋的な美意識の感じられる装飾で画面を埋め尽くすような表現も生まれてきます。


 ある生徒が抱く疑問というのは、他の多くの生徒にとっても無関係ではないことが多くあります。刺さる仕掛けにつなげられるかどうかは教師の問題意識が重要になりますが、私の感覚では生徒の表現に関する疑問のほとんどは思考を促す関連事項が存在すると考えています。それに関する情報を教科書から引用することもありますが、生徒の疑問にジャストミートするような情報はGoogleで検索する方が精度が高いですし、Google画像をリンク先に貼っておくと、生徒はダイレクトに関連事項に視覚的に触れたり、アクセスしたい情報を深掘りしたりすることもできるため、Googleスライドでそういった情報を共有することには大きな有効性があります。


 こうして、生徒の疑問を生かして、アクティブに授業資料を発展させていくことができるのがGoogleスライドの可能性の一つであると考えています。探究的な学習において、生徒が疑問や課題意識を自ら生み出していく機会はたくさんあります。そういったものを教師がキャッチしてより視野が広がる情報提供につなげて、生徒の学習をサポートする。そのためのツールとしてGoogleスライドを利用した総合的な授業資料が強力な味方になってくれます。


慣れさえすればGoogleスライドはジャムボード以上にインタラクティブな作業が可能



 インタラクティブな学習を可能にするツールとしてジャムボードは優秀ですが、このツールの難点はリンク貼付けやページの挿入の他、Googleスライドで活用するたくさんの便利な機能がほとんど使えないということにあります。インタラクティブに意見を出し合ってブレーンストーミングしたり、手がきしたりすることに関しては高い操作性を持っていますが、良くも悪くもその点に特化しすぎています。もしも、生徒がGoogleスライドの操作に慣れているのであれば、協働学習ではジャムボードよりもGoogleスライドの方が学びを深めることにつながると考えています。

 使い慣れる状況になるためには、普段の様々な授業でGoogleスライドを活用する必要があります。この部分がハードルとして高くなりがちですが、Googleスライドはただのプレゼンテーションツール以上の使い道があり、各教科で便利に活用できる可能性を持っていると考えています。私の場合は振り返りレポートでもGoogleスライドを活用していて、これ抜きの状況にはもう戻れないぐらいに使い倒しています。

 GoogleスライドはMicrosoft Power Pointとの互換性が高いという点が教師にとっても都合の良いツールであると言えます。Power Pointを活用して授業をしている教師も多く、教師にとってかなり使い慣れたツールの一つと言えるでしょう。そう考えると、普段使っているPower Pointの授業資料をGoogleスライドに少しアレンジして生徒と共有することはそんなに難しいことではないと思います。

 生徒とインタラクティブに学習を進めていくと、教科書の内容を超えて学びが深化していきます。その深化を授業資料として形に残して発展させ、他の生徒と共有してまた新たな学びを生む。そんなことにつながれば教師も生徒も授業時間をより充実したものにすることができるのではないかと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はGoogleスライドで授業資料を生徒と共有し、授業毎にアップデートしていくことの可能性について述べました。デジタルは紙の資料と違ってアップデートしても配り直す必要がないというのも魅力ですが、それ以上に大切なのはアップデートが継続的に可能であり、その資料の情報を生徒の学習状況に合わせて調整し、生徒が学びを広げるきっかけをより掴みやすくなったことであると考えています。

 デジタルはあくまで学びのきっかけを促すツールであり、学びの本質はまた別のところにあると思います。Googleマップを見ることでまだ見ぬ地に行きたくなり、実際に現地に行って体験することで本物の経験になるのと同じで、学習も実際に自分で表現したり、思考して新しい世界観で考えられるようになったり、そういったことにつながる手頃な情報に触れるツールとしてデジタルが役立ちます。

 これからもデジタルを有効活用して、学習体験をよりリアルなものにしていけるよう取り組んでいきたいと思います。

 それではまた!

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