倉北アート&クラフトプロジェクト 第3回ワークショップ

  先日の3月1日に私が今年度から運営している倉北アート&クラフトプロジェクトの第3回ワークショップを開催しました。この活動は、中学校の美術室を地域に開放し、「生活をアートとクラフトでもっと楽しく、美しく」することを目指しています。福武教育文化振興財団の助成金を得てこの活動を行なっており、私が普段使っている美術室で様々な材料や道具を体験して創造活動を楽しめる場を地域の人々に提供しています。

 今年度最後のワークショップでは過去2回のワークショップの経験と反省を生かして、材料や環境を改善し、さらに楽しめる場にして臨みました。今回のブログではこの活動レポートをまとめました。


道具が見やすい棚を利用


 過去第1回と第2回のワークショップでは教室中央のテーブルに道具や材料を置いていました。これでも参加者の方々は次々に気になるものを手に取って使われていたので、十分だったと言えますが、今回はすのこで棚を作成して、使える物をレイアウトし、何があるのか見やすくすると同時に、増えた道具・材料を狭い範囲に納めるためのスペースを確保しました。レイアウトではショップのように物が体系的に並べられている状態も意識しました。

 すのこで作る棚はすのこをそのまま組み合わせてできるためとても簡単です。私は美術室だけでなく、担任をしているクラスでもすのこの棚を利用していますし、家でも使っています。すのこそのままのシンプルな状態でも良いですが、ペンキ塗装も合うので、超手軽なDIYとしておすすめです。


リス毛の筆や書道用の大筆など充実した道具

 今回のワークショップで特に力を入れたのが「体験の向上」で、筆などの道具類を充実させました。その中の一つがリス毛の筆です。これは抜群の水含みと柔らかい毛質が特徴で、長いストロークの彩色や、グラデーションの美しい「ぼかし」技法に最適です。また柔らかい毛でありながら毛先がよくまとまり、繊細な描写から面塗りまで幅広く対応する万能筆です。リス毛の筆はある程度のサイズのものになると1万円ぐらいになる高価な品ですが、助成のおかげで複数本用意することができました。


 私はこの筆を是非多くの人に使ってほしいと考えてきました。私が大学院生の時代にゼミの先生からリス毛の筆を貸していただいた時に、筆を画用紙に入れた瞬間に衝撃が走ったのを今でも覚えています。とにかく塗り心地がよく、広い面積も細かい線も全て筆一本でいけてしまうリス毛の筆は、それまでの筆に対する印象を大きく変える体験となりました。こういう良い筆を使うことで水彩画が好きになる人は多いと思います。このような背景があって、体験の向上を目指した今回のワークショップで用意しました。

 他にも書道用の大筆も用意し、小中学生が普段の習字の授業で使っているような筆とは比べ物にならないぐらい大きな筆で書く楽しさも味わえるようにしました。




 ワークショップだからこそ体験できる道具の魅力。この体験を通して、後日ショップへ行って道具を購入し、長く愛用する品を所持することに繋がるのであれば、このワークショップが非常に有意義なものになると思いますし、そういう活動ができるよう今後も発展させていきたいです。


レジンクラフトや七宝焼が今回も人気

銀粘土とアイロンビーズも追加

 第1回から人気があったレジンクラフトと参加者の要望に答えて第2回からできるようになった七宝焼は今回も人気でした。レジンクラフトは手軽に作れて、しかもとても綺麗なものができるので、保育園や小学生低学年の児童にとっても取り組みやすく、満足度の高い作品ができていました。

 七宝焼は絵具を配置するのが少し難しいところもあり、焼き上がった時にイメージしていた状態と違うこともありましたが、どれも綺麗な作品になり、参加者に満足いただけるものになりました。七宝窯からガラスが溶けてオレンジ色の状態で出てきた作品が徐々に冷えて色が露わになっていくのも七宝焼の感動ポイントになっていました。


 今回、新しく用意したもので銀粘土があり、これに早速興味を持った小学生が作成に取り組んでいました。しかし、私自身、この材料を使ったことがなく、たまたまAmazonで見かけて興味本位で購入したものなので、指導ができる状態ではありませんでした。小学生たちは説明書を見て作り方を確認して取り組み始めたので、私も一緒になって作り方を勉強しました。本当はガスコンロで焼成するのですが、美術室にはないため、七宝窯で焼成して何とか形にすることができました。焼き上がった時に粘土を見ると真っ白になっていたので少し焦りましたが、説明書をよく読むと、最後はやすりで研磨して表面の灰を除去すれば銀が出てくるということを理解し、無事完成させることができました。小学生の保護者も銀粘土の作品を楽しんでおられ、素敵なアクセサリーができました。

 アイロンビーズも今回のワークショップで新しく追加した材料の一つです。これを導入したきっかけは3年生の美術の授業(卒業制作)である女子生徒が素敵な物を用意しているのを発見し、それが何かを聞いたところアイロンビーズで作った物であると教えてくれました。とても魅力的な物ができていたので、すぐにその日の夜にダイソーで購入し、ワークショップに間に合わせることができました。

 アイロンビーズも人気があり、参加者の小学生とボランティアスタッフで参加してもらっていた美術部の生徒が一緒になって次々に素敵な作品を作成していました。


 私自身もあまりよく知らない物があっても、こうしてワークショップを通じて参加者と一緒に勉強できるのも楽しく、Win-Winなので、今後もこういう活動を継続していきたいと思いました。




ワークショップ後も中学生に利用してもらう

 ワークショップを開催した3月1日以降に美術科の補習を放課後に行いました。この場ではワークショップで余った材料を自由に使えるようにしました。

 補習に参加した3年生たちもアイロンビーズやレジンに興味を示し、卒業制作の作品をさらに素敵なものに作り上げることができました。アイロンビーズを使った生徒の一人が「家にいっぱいあるけど使わないままにしているので、また使いたくなった!」と言っていて、アート&クラフトプロジェクトの活動がきっかけで、生徒がさらに造形に興味を持つことができるようになったことが実感できて嬉しい思いがしました。

 卒業制作を終えた生徒数名が油絵に興味を示し、「一度やってみたい!」と言ったので、早速油絵の描き方について簡単なレクチャーをして取り組んでもらいました。油絵をしたことがある人ならよく知っていると思いますが、水彩やアクリルとは全く違う感触の描き味なのが油絵です。生徒は普段とは違う感触に「油絵楽しい!!」と言いながら初の油絵を描き上げていました。早速家に持って帰ろうとしていたので、油絵が乾くまでの数日間は教室で乾かしておくいた方が良いということを伝えると、「そんなに乾かないんですか!?」とこれまた衝撃を受けていました。こういう心が動く体験は何よりも学びになるので、良い機会を提供できたと思います。




良い環境があれば体験も充実

美術室を地域に開放する可能性

 「生活をアートとクラフトでもっと楽しく、美しく」というプロジェクトを始めたのは、人々に造形することがいかに生活を豊かにして、楽しみを作り出すことに重要な役割を果たすのかを体験を通して実感してもらい、その輪を広げていきたいと考えたためです。世の中にはたくさんの商品が溢れ、流行を作り出したり、本来の価値から遥かに高騰した値段で物がやり取りされるなど、自分で作るオリジナルな物よりも「既製品」に重きが置かれる傾向も見られます。しかし、昔であれば生活に必要な服や草履なども自家製で、戦後になって社会が豊かになって欲しいものがお店で買えるようになり、多くの人が裁縫やミシンを日常的に行わなくなりました。

 便利で早く安いしかも高性能、そんなタイパやコスパを考えると既製品が優れていて、手で作ることのメリットは殆どないように思えます。しかし、既製品にはない大切なことが手作りにはあるということを忘れてはいけないでしょう。まさに作っている最中のワクワク感であったり、少しずつ形になって、最後完成した時に味わえる達成感、時間を忘れて夢中で取り組む没入感(マインドフルネス)、誰かと一緒に造形に取り組む際の他者からの刺激や発見、学び。こういった生身で味わえる体験、作成の過程は充実感で溢れていると思います。

 充実した幸福な時間であれば、ゆっくり取り組むのも良いことです。それを急いで飛ばしてしまうのは体験の喪失であり、勿体無いことと考えることもできます。

 学校の美術室は造形を楽しむには大変良い環境です。それは木工室や金工室、被服室などにも当てはまることでしょう。地域の人々に開放されて、気軽に造形を楽しんでもらえるようにすることは人々の幸福(ウェルビーイング)に貢献することだと思います。そんな活動が日本全国や世界中に広まり、多くの人に造形を愛好してもらったり、地域の活性化につながったりすれば素敵なことです。私の好きな言葉の一つに、"Think Globally, act locally.("地球規模で考え、足元から行動せよ)という言葉があります。こういった活動を広げるのは簡単なことではありませんが、自分にできる範囲からでも、意義のあることであれば少しずつ広げていけるようにしたいと思います。


 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回は倉北アート&クラフトプロジェクトの第3回ワークショップのレポートと美術室をはじめとした学校の施設が地域に開放されて充実した体験ができるようにすることについて私の考えをまとめさせていただきました。

 これからも、学校という施設を最大限に活用して、地域の人々に楽しい体験をしてもらえるよう、取り組んでいきたいと思います。学校には様々な特別教室や体育館、グラウンドなどがあり、体験できることが充実しています。学校の高いポテンシャルを生かせるよう、これからも自分にできることを見つけていきたいと思います。

 それではまた!

 それではまた!


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