岡山アート&クラフトプロジェクト 第1回ワークショップ開催

 昨年から福武教育文化振興財団の助成を得て始まった倉北アート&クラフトプロジェクト。今年は私が岡山大安寺中等教育学校へ転勤となったため、倉敷北の名前を変更して岡山アート&クラフトプロジェクトという岡山県内での異動なら問題なく継続できる汎用性の高い名前で生まれ変わって活動をしています。

 このプロジェクトはアートとクラフトの力で生活をもっと楽しく、美しくすることを目的にしており、学校の美術室を地域に開放して様々な画材と道具で造形を楽しむことができる機会をつくってきました。昨年は倉敷市立北中学校で3回生徒と地域に向けて開催し、平日の放課後にも何度か生徒向けに充実した画材と触れられる機会を設けてきました。美術室と画材屋さんのような環境が融合した場所を目指して環境改善に取り組んでいます。

 昨日8月8日はこのプロジェクトの本年度第1回目のワークショップを開催しました。今回のブログはそのレポートになります。参加者の多くは勤務校の関係者ですが、今後さらに色々な場所から参加される方が増えてほしいと考えていますし、助成関係の取り組みに興味を持ってもらえる方が増えて、地域をを活性化させる活動が増えてほしいので、今回のレポートで興味を持ってもらえる方がいらっしゃれば嬉しいです。


過去最多の約60名の方が参加

体験できるものを場所で分けるレイアウトを事前に設定

 今回のワークショップではこれまでの活動で蓄えてきた材料や道具に加えて、新たに用意した画材としてソフトパステル(昨年まではハードパステルとオイルパステルのみでした)やコルク粘土、コピックなどのアルコールマーカーやガラスペンなども加えて、さらに多様な体験ができるようにしました。

 参加者は記名していただいた人数が55名で、実際はさらに多くの人が参加している状態だったので、約60名が参加されていたと思います。過去に一番多かったのが23名だったので、一気に人数が増えました。これは勤務校が変わったことも関係するかもしれませんが、夏休み期間中の開催であったことや、これまでに参加いただいていた方が継続して参加してくださったこともあると思います。

 前任校では1年しかこのプロジェクトに取り組めませんでしたが、今後何年かは継続して現在の勤務校で取り組めるので、リピーターを増やしていきたいと思います。

 今回のワークショップでは体験できるものを場所で分けて、より参加者が造形に取り組みやすい形にしました。机のサイズを大きくするために板をクリップで固定し、よりスペースを広く取れるように工夫もしました。美術部の生徒たちがボランティアスタッフとして参加してくれていたので、各場所でサポートしたり、一緒に制作したりするなど、とても良い働きをしてくれました。このボランティアスタッフの助けなしには今回のワークショップは回すことができませんでした。本当に感謝です。ちなみに、勤務校でのワークショップ開催ではありますが、主催は学校ではなく地域の団体による行事という扱いなので、ボランティアに参加した生徒は要録に記載することにもなっています。こういう地域の行事を教師がつくり、生徒が活躍できる機会をつくり出すことも、地域の教育に携わる教師にできる大切な役割の一つであると考えています。



パステルと水彩の特別講座

様々な絵具を描き比べ

 昨年の第2回ワークショップ以降、3回連続で特別講座を午前・午後それぞれ用意し、参加される方が取り組みやすい内容にしています。昨年の第1回のワークショップでは、ただ材料と道具を用意して自由に造形活動を楽しむというもので、これでも多くの参加者には楽しんでいただけたのですが、「自由すぎて何をするか迷う」という方もいらっしゃるので設けるようにしています。

 今回はパステルと水彩の特別講座を用意し、それぞれの画材や道具の使い方を簡単に説明して絵画体験していただきました。パステルはあまり馴染みのない人が多く、手でこすって色を伸ばしたり、パステルブラシで色をぼかしたりして、独特の風合いを楽しんでいただきました。

 水彩の講座では、不透明水彩と透明水彩というものが存在することを始めて知ったという方もたくさんおられ、色を重ねることによって独特の雰囲気を出せる透明水彩と、色が強くてマットな塗りあがりになる水彩の違いを楽しまれていました。

 前回から導入したリス毛の筆を今回はさらに増やし、筆が違うと塗る感覚が全く変わることや、水持ちが良い筆で描く楽しさと心地良さを味わっていただきました。




 小学校ではマット水彩を使うことが多く、多くの人が水彩自体は経験していますが、透明水彩や不透明水彩という特化した水彩があることは知らない人がほとんどですし、当然使ったこともない人ばかりなので、こういう体験をしてもらえる機会を大切にしたいと考えています。
 一度体験すれば、画材に対する考え方が変化しますし、画材専門店に行く動機にもなります。リス毛の筆は大変高級で画材専門店に行かないと購入できるものではありませんが、それでもこれが一本あれば水彩画でできることが格段に広がるため、1本でも購入して大切に使い続けるということにもつながると思います。描く時間の充実は絵画をより好きになり、自然と技術が向上するサイクルも回るようになると考えられるので、これからもたくさんの人にリス毛の筆を体験してもらいたいですし、色んな筆を用途に応じて使い分ける絵の楽しみ方も知ってもらえるようにしたいと思います。

今回も七宝焼やレジンが大人気 今後の課題も

 ワークショップでは毎回七宝焼やレジンのクラフトが人気で、今回もどちらともたくさんの人が制作を楽しまれていました。あまりの人気に午前中の段階でほとんど材料が尽きてしまい、午後はレジンを渾身の力で絞り出す子どもや、七宝焼用に用意した銅板がほとんど影も形もなくなるぐらい使い切られていました。

 これまで手軽に七宝焼を楽しんでもらえたらと思い、キーホルダーやブローチの型に銅板が付属しているものを用意してきました。今回もある程度の個数を用意していましたが、むしろ銅板だけを用意して、自由に形をアレンジしてもらった方が体験の質としては向上すると感じました。なので、今後は既製品を使わずに銅板を金切りバサミで自由に形をつくる方法で体験してもらおうと思います。

 しかし、これではただの綺麗な七宝焼はできてもアクセサリーにはできないということで、そのような場合には、樹脂粘土を使って裏面を加工したり、同じ形のものを2つ作成して2枚を接着剤や樹脂粘土で合体させたりする、もしくはレジンでヒートンと一緒に固める方法が有効かと思います。七宝焼は裏面には裏引き釉薬を塗って焼成するのですが、これも黒い綺麗な表面になるので、あらかじめベースの銅板に穴を開けておくというのであれば、樹脂粘土を使わずとも綺麗な作品にすることは可能です。

 七宝焼で樹脂粘土を併せて使うかどうかは結局のところ作り手がどんな作品にしたいかによりけりなので、試作品のバリュエーションを増やして、参加者が判断できるようにしておきたいと思います。



木材を使った工芸品で廃材が生まれ変わる

 以前から木材の廃材のストックがたくさんあり、今回はホームセンターで程よいサイズの端材も購入して、材料を充実させた状態でワークショップを迎えました。

 木を組み合わせて素敵な工芸品を作られる方がたくさんおられ、ネームプレートを作ったり、建物を作ったり、すのこの廃材で武器を作ったり、創造力で次々に生み出される作品たちには驚かされるばかりでした。ただの廃材が素敵な作品に生まれ変わる。美術の面白さはまさにこういうところにあると思います。


 レジンクラフトを収納する小物を作る中学生もいて、とても満足してもらうことができました。自分とは異なる年齢や経験をもつ人の作品や制作方法を見ることで、「自分ならこうする」「こんな表現もあるのか」と、自分の判断基準を相対化する機会になります。そうした経験の積み重ねが、美的判断の幅を広げていくのだと思います。
 アート&クラフトプロジェクトという名前の由来は19世紀にイギリスでウィリアム・モリスが展開したアーツ&クラフツ運動です。モリスは、産業革命による大量生産が広がる19世紀のイギリスで、生活用品から美しさや手仕事の価値が失われていくことに問題意識をもち、工芸やデザイン、そして「ものをつくること」と生活との関係を問い直しました。この運動によって工芸やデザインの人々に対する考え方を大きく変化させ、改めて手作りのものの良さが人々に知られるようになりました。そんな時代を経て現代につながります。100均も便利で人気ですが、少々値段は張ってもハンドメイドの品を求める人も沢山いますね。
 美術体験の喜びや充実度は作品の見栄えや完成度だけでは決められません。今回参加いただいた大人の方で、「七宝焼で自分としては思ったものが作れなかったけれど、他の人から素敵と言われていると、段々とこの作品に愛着が持てるようになってきました。作った思い出と共に、これから大切にしていきたいです」と言われていました。こういう美的な体験が生活に潤いを与え、また次の作品作りや、手作りのものを大切にして、ときめく日常を実現していくのではないかと思いました。

次回に向けて課題を洗い出す

 今回かなりの盛況をいただいたワークショップでしたが、個人的には反省材料は山ほどありました。

◯参加人数は40人で制限していたが、実際はそれ以上の人が参加。申し込み方法の改善。

◯教室のキャパシティが40名のところに40名以上の人が来たため、今後は少し人数を絞る(30名程度を検討)。

◯体験ごとに机を分けていたが、もう少し細分化して関係する材料は教卓周辺ではなく、机のところに設置すれば片付けもわかりやすい。

◯レジンは人気だが、1人で延々と取り組まれると材料がなくなり体験できない人が出てしまうため、個数制限を設ける。

◯絵画スペースのところにモチーフを置いておき、すぐに描けるようにする。

 これ以外にもいくらでも浮かびそうなぐらい、まだまだ改善の余地があると感じた今回のワークショップでした。たくさんの参加者がいたからこそこれまで何となくでも大丈夫だったことが、課題として浮かび上がってきたというのもあると思います。新しいことに挑戦した分、発見もあるので、これからもワークショップに限らず色んな挑戦をしていきたいと思います。そしてその分反省ですね(笑)


 最後まで読んでくださってありがとうございました。
 今回の内容で、ワークショップや助成に関して興味を持ってもらえたら嬉しいです。もし、自分にもできそうだという人がいましたら、自らワークショップの企画を地域に向けて行なったり、助成に応募したりして活動に踏み出してみてほしいと思います。
 今後もさらに参加される方が造形を楽しみ、美術の魅力を知ってもらえるよう、次回に向けて準備していきたいと思います。助成をいただいていることで、普通ではできない挑戦ができることに感謝しつつ、資金を有効活用できるよう、計画的に運営していきたいと思います。
 これから束の間の盆休みなので、少しゆっくりしたいと思います。17日からは夏期特別授業で実質2学期が始まるので短い時間ですが、この時期だからこそできることをして鋭気を養いたいと思います!
 それではまた!
 


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