「心に刺さるデザイン」を考える 中学3年生のグラフィックデザイン授業

 今回は3年生で行ったグラフィックデザインの授業実践と作品展示について紹介します。
 題材名は「メッセージを伝えるグラフィックデザイン」で、題材を貫くテーマとして「心に刺さるデザイン」を掲げて取り組みました。メインの課題はポスターですが、ポスターができた人はグラフィックデザインに関する様々な作品を制作できるようにしました。アイディアスケッチと鑑賞会を含めて10時間構成の題材でした。




マインドマップで「心に刺さる」アイディアを膨らませる

 メインの教材である「心に刺さる」ポスターの作成にあたってはアイディアスケッチ用紙に世の中に訴えたいメッセージやマインドマップをメモして、アイディアを膨らませてから制作に取り組んでもらいました。

マインドマップの例




 ポスター制作ではこのようにアイディアを膨らませる時間が特に大切です。いくら上手にポスターを描いたとしても内容が普通だとメッセージが伝わりにくくなってしまいます。あと、当たり前のことをポスターで訴えても良い反応を得ることは難しいので、見る人の問題意識を促したり、意表をついたりする言葉や文章が重要になります。誰かの「心に刺さる」ために何が必要か考える。こういったコピーライティングのポイントについても教科書や私が集めた資料などを例にして説明します。「心に刺さる」とは、必ずしも強烈な言葉で人を驚かせることではありません。見る人の心に何かを残すこと。その方法は、笑いでも、美しさでも、違和感でも、共感でも構いません。
 このアイディア出しが慣れていないと難しいものですが、マインドマップは生徒にとって非常に有効な方法となります。マインドマップで言葉を連想していくと、普段は意識していなかった自分の経験や感覚が思いがけずつながっていきます。そうして生まれた、自分にしかない視点や組み合わせが、見る人にとって新鮮なメッセージになることがあります。
 マインドマップは言葉だけでなく、絵を入れることでさらにイメージを膨らませることができます。気楽に言葉と絵をかき込む落がき感覚で生徒には取り組ませています。



アナログとデジタルの両面で

 今回の制作では八切り画用紙に直接描くかデジタルで編集したものを印刷するか、制作方法を選択できるようにしました。全てアナログで制作する生徒もいれば、描いた絵を写真で取り込み、それをGoogle図形描画やCanvaで編集してアナログとデジタルのハイブリッド作品にする生徒もいました。



 生徒の中には最初にアナログで制作し、2作品目でデジタル版のものを制作した生徒や、その逆にデジタル版を作成したのち画用紙に描く生徒もいました。アナログとデジタルそれぞれに良さがあるため、制作方法を限定せずに、幅広く取り組んで充実した学習をしてほしいと考えていたので、この点についてはとても良い手応えを掴めたと感じています。

ポスターができた人はポスターに関連したアニメーションや年賀状など他のグラフィックデザインにも挑戦

 ポスターのデザインや制作方法の違いによって、制作に必要な時間に大きな個人差がありました。デジタルでシンプルなものを作成した生徒や、授業時間以外にもデジタルツールで編集したり描いたりした生徒はポスターの完成が早かったため、そこからさらに学習を深めてポスターに関する映像作品や年賀状のデザインなどを作成しました。メッセージを伝えるのはポスターだけではなく、ポスター以外でもグラフィックデザインやコピーライティングで心に刺さるメッセージを伝えることができます。生徒自身でグラフィックデザインとさらに向き合って学習を深めることができるよう、発展的な制作の選択肢を用意しました。
 年賀状のデザインについてはかなり本格的なものを制作する生徒もいて、ポスター以上に「心に刺さるデザインができた!」と言って作品の完成を喜んでいる生徒もいました。この生徒は「ポスターの制作は上手いこといかず毎時間憂鬱だった・・・けど、年賀状デザインは本当に楽しめた!」と言っていました。これには授業者として非常に複雑な気持ちで、ポスターの授業としては反省しなければいけないと感じましたが、「メッセージを伝えるグラフィックデザイン」という大きな枠で題材を考え、年賀状にも取り組めるようにしておいて良かったと思います。

 
 映像作品では1分程度の非常に手が込んだ作品もあり、鑑賞会では「PVみたい」「ACのCMやん(笑)」「YouTubeの広告!?」といった反応があってとても盛り上がりました。
 動画の作成にあたっては、Google VidsやCanvaで作成したものをMP4でダウンロードし、Googleクラスルームでファイルを提出させたものをiMovieで繋ぎました。160名の学年で20名程度が動画を作成し、5分ぐらいのものになりました。作品数が程々だったので学年全体を一まとめにしましたが、これ以上になると少し長い印象にもなるので、クラス毎の動画にするなど、鑑賞での見せ方は検討が必要になりそうです。

作品鑑賞会後に作品掲示

 ポスターは掲示されて多くの人の目に触れることで力を発揮します。そのように考えると授業で行う作品鑑賞会だけでは時間的にも作品数的にも勿体無いと思い、階段の踊り場スペースにポスターのコピーを展示しました。実物を展示に使うと大変な労力となりますが、作品はA3に4枚で印刷し、マスキングテープで紙を連結し、壁もマスキングテープで簡単に固定しました。1〜2週間の短期間の掲示なのでこれで十分と考えています。




 掲示するとすぐに生徒が興味津々で作品を鑑賞していました。他の先生たちにも楽しんでもらうことができました。
 普段はお世辞にも綺麗な場所とは言えない踊り場の壁面ですが、こうして多くの人から楽しんでもらえる場所にすることができたのは良かったと思います。学園祭やオープンスクールぐらいしか作品を本格的に展示する機会はありませんが、印刷された作品とはいえ、こうして空間を飾り、グラフィックデザインやポスターの魅力を鑑賞できる機会をつくることは大切だと考えています。
 これからも美術教員として学校の美術文化を盛んにできるよう、取り組んでいきたいと思います。



 最後まで読んでくださってありがとうございました。今回はグラフックデザインの学習の実践と展示について紹介させていただきました。題材設定や展示について何か参考になることがあれば嬉しいです。
 今後も教材開発や展示方法の工夫に励んでいこうと思いますので、また紹介できることがあればブログで書こうと思います!
 それではまた!
  

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